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ハッピークローバー
第百十一話 チャックその十二

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「色気のない服装をするのもね」
「自分の身を守ることなの」
「目立たない様にすることも」
 そうすることもというのだ。
「いいってね」
「そういえば目立つと」
「何かあると目を付けられるのよね」
「変な人とかに」
「だから時にはね」
「目立たない様にすることね」
「終戦直後なんかね」
 その混乱期はというのだ。
「警察もガタガタで」
「ああ、神戸もね」
 理虹は自分達の学園がある街のことをここで思い出した、尚このことは彼女達が住んでいる大阪も状況は同じだった。
「治安滅茶苦茶で」
「ヤクザ屋さんが自警団やる位にね」
「酷かったのよね」
「それでね」 
 そうした状況でというのだ。
「目立たない様に」
「地味にすることね」
「お祖母ちゃん戦後生まれだけれど」 
 それでもというのだ。
「ひいお祖母ちゃんに言われて」
「かな恵に教えてくれたのね」
「そうなの。色気のない服装をして」
 そうしてとだ、かな恵はまた話した。
「目立たない様にすることもね」
「大事なのね」
「お洒落する時はして」  
 そうしてというのだ。
「そのうえでね」
「しない時はしないことね」
「そうしたことも言われたのよ」
「いいわね。それじゃあね」 
 理虹は声を笑わせてかな恵に話した。
「そこに腹巻なんてどう?」
「あっ、いいわね」
 かな恵も笑って応えた。
「もう色気も何もないわね」
「そうでしょ」
「それでいったらね」 
 それこそというのだ。
「もう完璧ね」
「そうでしょ」
「ええ、やってみてね」
 それでというのだ。
「いいかもね」
「でしょ?まあ普通にデートとかじゃアウトだけれどね」
「そんな恰好だと即刻変えられるわね」
「港君にもね。けれどそれで外歩いたらね」
「声かけられたりもないわね」
「まして襲われるなんてね」
「ないわね、ジャージもだけれど」
 それに加えてというのだ。
「腹巻がね」
「いいでしょ」
「パワーアイテムになってるわね」
「それでマスクして頭にキャップ帽」
「完璧過ぎるわね」 
「誰も声かけないわ、いやひょっとしたら」 
 理虹はまた笑って話した。
「不審者と間違えられて」
「通報されるのね」
「そうなるかもね」
「そうね、それはそれでね」
「嫌だけれどね」
「けれど襲われることは」
 かな恵はその危険はと話した。
「ないわね」
「それ大きいわね」
「ジャージだけでもね、何かチャックの服って」 
 ふとだ、かな恵はあらためて思って理虹に話した。
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