【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第10章】カナタとツバサ、帰郷後の一連の流れ。
【第3節】ユーノの両親についての中間報告。
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ールヴは大きくうなずき、その「歴史的な背景」まで含めて、こう語り始めました。
「ええ。そのとおりです。当時、ガラルオン次元港では、経費と人員を削減しすぎた結果、運営がいささか杜撰なものになっていました。
その一帯は元来、〈八伯家〉の一つであるガウザブラ家の所領でしたが、新暦で言う前54年にデヴォルザムで身分制が廃止され、後に法律で「私有できる土地の総面積」に上限が設けられてからも、ガウザブラ家は、州都ネイザルにおけるさまざまな利権と同様に、ガラルオン次元港の経営権をも手放すことなく握り続けました。
その次元港は、当時から基本的には「貨物専用」でしたが、旅客用の施設が不要で、その分の経費がかからなかったせいでしょうか。新暦50年代の頃までは、その経営にもそれ相応の旨味があったようです。
また、身分制の廃止後、まだ旧暦のうちから、ガウザブラ家は『もう貴族としての特権が無いのなら、もう貴族としての責務を果たしてやる義理も無いだろう』とばかりに、かつての領民たちを保護することを止め、一般の企業と同じ土俵に立って露骨に「一族の権益の拡大」に乗り出していました。他の〈八伯家〉に対しても、『機会さえあれば、ゴリ押しで娘を嫁がせ、やや強引にでも姻戚関係を築いてゆく』などといったことをしていたようです」
「しかし、当然ながら、そうした『他者への配慮に欠けた、数々の強引な行動』によって、ガウザブラ家は随分と多方面から、少なからず怨みを買っていました。
そして、新暦52年には、とうとう爆破テロの標的となり、当時の本家当主とその妻、一時的に実家の方に戻って来ていた当主の妹たちや娘たち、さらには、彼女らがそれぞれの嫁ぎ先でもうけた子供たち、合わせて20名ほどが、某ホテルにおける晩餐会の席で一度に爆殺されてしまったのです。
幸いにも、当主の息子は、交通上のトラブルで妻子とともに随分と遅刻して会場に到着したため、彼等三人だけは死なずに済んだのですが……。
当時は、彼もまだ三十ちょっとの若造で、家業の継承などに関しては『嫡子としての準備』がまだ充分にできてはいなかったようです。その後は、分家の造反などもあって、ガウザブラ家の内部では長らく混乱が続き、一族の利権の維持に関しても、かなり危ない状況が続きました。
そうした背景もあって、新暦53年以降、ガラルオン次元港でも経費や人員が大きく削減されていった訳ですが、結論から先に言ってしまえば、ガウザブラ家の新当主はその削減の『匙加減』を間違えました。その結果、時には『的確な管制指示すら出せない』といった状況も発生するようになり、そのせいで〈星の囁き号〉も着陸事故を起こしてしまった、という訳です」
「具体的に言うと
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