【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第10章】カナタとツバサ、帰郷後の一連の流れ。
【第3節】ユーノの両親についての中間報告。
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ナとハドマンドは一本の航路で直接につながっており、この「東部次元港」からも定期便が就航しています。
ジィドは『少なくて申し訳ないが、今後の治療費の足しにでもしてほしい』と、それでも「相場以上の額」の退職金を手渡して、二人を故郷へ帰らせました。
ジィドがルミエ(当時、40歳)と出逢ったのは、その直後、6月も末のことでした。
まだ準備中の居酒屋の前で、ルミエが地上げ屋に絡まれていた時、ジィドが偶然その場に通りかかり、得意の魔法で彼女を助けたのです。
(ちょうど、リンディの父親がリンディの母親を助けた時のように。)
二人は、ともに「母一人、子一人」の母子家庭で育ち、また、今までずっと配偶者や子供には恵まれて来ませんでした。さらに言えば、二人には『もう心が折れかけており、廃業も視野に入っている』という共通点もあります。そんな二人が互いの事情を知って「男と女の仲」になるまで、大した時間はかかりませんでした。
客観的に見れば、その状況は確かに、『ただ、傷ついた者同士がその傷を舐め合っているだけ』だったのかも知れません。あえて悪く言うならば、ある種の「共依存」だったのかも知れません。
さらには『いい年をして』と眉をひそめる者もいるかも知れませんが、それでも、今や二人が本当に愛し合っていることは紛れもない事実でした。
また、そうした状況にあっても、ルミエは実直に居酒屋の営業を続け、ジィドはデグナンとともに非合法の仕事を幾つもこなし続けました。
なお、小型艇ならばともかく、まともな大きさの貨物船をたった二人で動かすというのは、新暦55年当時の法律でも明らかに違法行為でした。「法律上は」一日の勤務時間には明確な上限があり、当然に夜間勤務のためには「交代要員」が必要だったからです。
それでも、ジィドの立場からすれば、運び屋を廃業した後、店をたたんだルミエと二人で静かに暮らしていくことまで視野に入れると、老朽化した船がまだまともに動くうちに、もう少しぐらいは稼いでおくしかなかったのでしょう。
もちろん、デグナン(当時、66歳)も老骨に鞭を打って、ジィドに最大限の協力を続けました。ジィドが彼のことを父親のように思っていたのと同じように、彼もまた今ではジィドのことを息子のように思っていたのです。
そんな事情もあって、デグナンはことさらに「ジィドとルミエの仲」を応援していたのでした。
【なお、デグナンは新暦26年の夏に37歳で愛する妻や息子と死に別れ、早々と天涯孤独の身になっていた人物でした。また、全くの偶然ながら、彼はジィドと背格好や雰囲気がどことなく似かよっており、実際に、他人からは『実の親子か』と見間違えられてしまうことも、しばしばあったそうです。】
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