暁 〜小説投稿サイト〜
魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)
【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第10章】カナタとツバサ、帰郷後の一連の流れ。
 【第3節】ユーノの両親についての中間報告。
[4/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ていませんでした。
 だから、彼等は自分の持ち船が老朽化して、小手先の修理ではもう検査に通らなくなってしまったら、そのまま廃業するしか無かったのです。

 そして、実際のところ、新暦55年当時、ヴァイゼン出身の「運び屋」ジィド・クラーレ(当時、45歳)もまた『遅くとも来年の夏には、もう廃業せざるを得ない』という状況に追い込まれていました。
 もちろん、彼にとっても「船の老朽化」が最大の問題だったのですが、ジィドはそれ以外にも(他の同業者たちと同様に)もう一つ「どうしようもない問題」を(かか)え込んでいました。一言で言ってしまえば、それは「乗組員の高齢化」です。
 貨物船〈星の(ささや)き号〉の乗員は、新暦35年、ジィドが母親の死の直後にその船を一括で購入した時から、一貫して(彼自身を除けば)三人しかいませんでしたが、彼等はみな、ジィドより20歳以上も年長でした。
 その船では、ジィド・クラーレが船長と操舵手を兼任し、同じヴァイゼン出身のデグナン・ガバロスが機関士と整備士を務め、また、ハドマンド出身の「グジャルブダ兄弟」ガブドムとドルグムがそれら以外の仕事をすべて器用にこなしていました。そうして、この四人は新暦35年から丸20年もの間、同じ船の中で「まるで家族のように」暮らして来たのです。
 母子家庭で、父親の名前も顔も知らずに育ったジィドにとって、彼等三人は本当に「父親や伯父(おじ)のような存在」でした。だから、たとえ欠員が出ても、今さら新たな乗組員を迎えることは「心情的にも」難しかったのです。

【もちろん、それ以前の問題として、新暦55年には、もう『今から新たに運び屋の一員になろう』などと考える若者はいませんでした。同じ運送業に()くなら、大手企業の従業員になった方が、明らかに「安全」だったからです。
 そんな時代では、運び屋が乗組員を補充したいと思っても、もうほとんど『廃業した同業者の船の乗組員を再雇用する』ぐらいしか方策がありませんでした。当然ながら、それでは「高齢化の問題」それ自体は全く解決されません。】

 そして、ジィドがクレモナで極めて個人的に(職業上の問題とは別個に)何かしら「心の折れるような」強烈な状況に遭遇した後、以前からかなり体を悪くしていたグジャルブダ兄弟が、いよいよ『本格的な療養が必要だ』と診断されてしまいました。
 二人は双子で、もうじき70歳になります。肉体的にはもう随分と前から限界を迎えていたのでしょう。
『済まんが、ジィド。俺たちはもうここまでだ。今さらハドマンドに帰っても、もう身内など一人も生きてはいないが、それでもやはり、死ぬ時は故郷で死にたい』
 伯父(おじ)も同然の二人から涙ながらにそう言われてしまえば、ジィドとしても退職を認めない訳にはいきませんでした。
 幸いにも、クレモ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ