【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第10章】カナタとツバサ、帰郷後の一連の流れ。
【第3節】ユーノの両親についての中間報告。
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だよ。特に急ぐ必要は無い」
ユーノはそう答え、ダールヴもそれを真に受けて、決して急ぎはしなかったのですが……。
その年の12月になると、ユーノの許に、早速「ジィドのその後」についての情報がもたらされました。ダールヴは例の老人の証言から、あらかじめ「ジィドの持ち船の名前」や「その乗員の名前」など幾つかの重要な情報を入手していたので、今回はそれに基づいて「クレモナ第四大陸」と〈カロエスマール〉とで調査を進めたのです。
かつて統合戦争が終わり、暦が「新暦」に改められるとともに、BU式駆動炉の普及によって「大航海時代」が始まりました。その後は、今で言う〈中間領域〉の諸世界も続々と管理局システムに参入して、管理世界の一員となっていきます。
そうした中、多くの世界で「より古い方式の駆動炉」を持った旧式の次元航行船は、そのまま廃棄されたり、あるいは「格安で」民間に払い下げられたりしました。結果として、個人で次元航行船を所有することに関しては一気にハードルが下がり、そうして手に入れた船を貨物船に改装して個人経営の運送業を始める者たちも現れました。
それが、いわゆる「運び屋」です。
当時は、典型的な「ハイリスク・ハイリターン」の職業であり、新暦30年代には、その職業はついに全盛期を迎えたのですが……その全盛期も長くは続きませんでした。
「運び屋」という業種が衰退に向かった理由は、主に二つあります。
一つは、40年代以降に犯罪者の多くが「中央回帰」を起こした結果、「中間領域における民間運送業のリスク」が相対的に低下し、今までは「犯罪被害による企業イメージの悪化」などを怖れて手を出せずにいた大手企業が少しずつ業界に参入し始めたことでした。
もう一つは、主に運び屋たちが起こした数々の「次元航行船の事故」を踏まえて、次元航行船を運用する上での「安全基準」に関する法律が、40年代の中頃から次第に厳しくなっていったことです。
【例えば、日本でも自動車については、自動車検査登録制度(いわゆる車検)というものがありますが、管理世界でも次元航行船については、それと同じような検査登録制度があり、ひとつには、その検査の基準が厳しくなっていったのです。】
また、新暦50年代になると、運び屋たちが保有する貨物船もすでにその多くが老朽化していました。その結果、『次の「船検」には通らない』という貨物船が続出したのです。
そして、運び屋たちの大半は、最初から『一山当てる』ためにこそ、その職業を選んだ者たちだったので、誰も『これを家業として次の世代に受け継がせよう』などとは考えておらず、当然ながら『将来的に貨物船を丸ごと買い替えるための準備資金を地道に積み立ててゆく』などといった行為は誰もし
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