暁 〜小説投稿サイト〜
魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)
【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第10章】カナタとツバサ、帰郷後の一連の流れ。
 【第3節】ユーノの両親についての中間報告。
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(二回結婚して、二回とも夫と息子に先立たれたと言う話は、一昨年にミーナおばさんから聞いた話とも完全に一致している。ダールヴの調査に間違いは無いだろう。)
 報告を聞きながら、ユーノはふとそんな感想を(いだ)きました。

【なお、ミッドやヴァイゼンでは新たな移民に「改名する権利」が認められていますが、クレモナではそのような権利は全く認められていません。「本名」が解っているのなら、カロエスマールで彼女の前半生を調べ上げることも、おそらくは容易な作業でしょう。】

 次に、男の名前は、ジィド・クラーレと言いました。ヴァイゼン出身の、個人で貨物船を所有するフリーの運送業者、いわゆる「運び屋」です。
 後に、大手企業の業界参入と一連の法改正によって、個人経営の「運び屋」は絶滅してゆくことになるのですが、新暦50年代のうちは、まだそうした人々もしぶとく生き残っていました。
 新暦55年の夏には、もうジィドはその居酒屋の常連になっていて、『女将(おかみ)とデキているのでは?』ともっぱらの噂だったそうです。
 また、同年の暮れには、ルミエも『もう、これ以上は耐えられない』とばかりに、()上げ屋の立ち退()き要求を受け入れ、その当時の相場どおりの価格で(ややバブル的な額で)その土地と店を売り払ったのですが、その結構な額の代金を受け取ったのは、最初から「代理人」のジィドでした。
 その日、ルミエ自身は現地の出入国管理局で「出国手続き」を取っていたのですが、少なくともクレモナの戸籍を確認した限りでは、二人が籍を入れたような形跡は全くありませんでした。
(ちなみに、ダールヴは『写真の男女がユーノの両親かも知れない』などという話は、全く耳にしていません。)

(何だか、15歳の頃に、ウェスカ先生から聞かされた「ひとつの仮説」とは、随分と違う話のようだが……。これは、要するに、最初から結婚詐欺の(たぐい)だった、ということか? 今までも、何となくそうなんじゃないかとは思っていたが……僕の父親というのは、やはり、本物の「ろくでなし」だったようだな……。)
 ユーノは思わず天を仰ぎ、ひとつ深々と溜め息をついたのでした。

「どうします? このまま、クレモナに来る前の二人や、クレモナを去った後の二人についても、調べますか? 今のところ、ルミエの具体的な出国経路は不明なのですが」
「いや。実は、女性の方の『その後』については、もうよく解っているんだよ。だから、あとは、二人の『そもそもの素性』と、男性の方の『その後』についてだけ調べてくれれば、それで良い。
それから、もちろん、これは単なる『時効成立事件の再捜査』のようなもので、僕の個人的な興味でやっているだけの作業だからね。今までどおり、本業の(かたわ)らに、片手間で進めてくれれば、それで充分
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