【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第10章】カナタとツバサ、帰郷後の一連の流れ。
【第3節】ユーノの両親についての中間報告。
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また、少しだけ遡って、同年の9月の中旬には、遅ればせながら、ダールヴの方からユーノの許に「例の写真」に写っていた二人に関する「中間報告」が届けられました。
クレモナ第四大陸の中でも首都ティエラマウルからは東へ2000キロメートルあまりも離れた場所に、「第四大陸・東部次元港」があるのですが、例の写真の場所は、『かつては「東部次元港」の北側に隣接していた港湾都市パウザニスの南部旧市街にあった「小さな居酒屋」だった』とのことです。
新暦55年当時(35年前)、旧市街の再開発計画に伴って、その一帯では違法スレスレの「地上げ」が横行しており、その居酒屋も、地上げ屋から不当な「立ち退き」を要求されていました。
そして、事実、新暦50年代の後半に、パウザニスの南部旧市街は一旦、再開発されたのですが……そうして出来た「新たな街並み」も、決して長くは続きませんでした。
その後、新暦79年には「東部次元港」そのものがパウザニスの南部郊外から北部郊外へと移転してしまったため、その南部旧市街も再び生まれ変わることを余儀なくされ、80年代のうちに「大きなビルの立ち並ぶ、当時の面影など欠片も残ってはいないオフィス街」に変貌してしまったのです。
それでも、ダールヴは今年になってからパウザニスの北部新市街の方で、幸運にも『当時は南部旧市街に住んでおり、その居酒屋の常連だった』という老人と巡り逢うことができたので、一杯おごって直接に話を聞いて来たのでした。
その老人の話に基づいて、ダールヴが現地クレモナの戸籍や登記簿などを改めて調べ直してみたところ、おおよそ以下のような事実が判明しました。
まず、女の名前は、ルミエ・トゥパールと言います。生まれは〈カロエスマール〉の第一州都ネイザルの郊外で、統合戦争時代の「クレモナからの新移民」の四世でした。
聞くところによると、彼女は「未婚の母」と二人きりの家庭で育ちましたが、新暦40年には続けざまに母親と夫と幼い息子を失って天涯孤独の身となり、42年にはクレモナ政府の「移民帰還政策」に乗っかって、27歳にして「辛い思い出しか無い故郷」を離れ、曽祖父母たちの故郷であるクレモナへ移民して来たのだと言います。
後に、彼女は首都ティエラマウルの西部郊外で再婚しましたが、47年には再び夫と幼い息子に先立たれてしまい、それからは東へと流れ流れて、翌48年にはパウザニスの南部旧市街の「とある居酒屋」で働くようになり、やがては彼女と同様に天涯孤独の身の上だった先代の女将の養女になりました。
そして、新暦52年の末にその老女が急死すると、ルミエは養母から正当に相続したその小さな居酒屋を一人で切り盛りするようになったのだそうです。
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