【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第10章】カナタとツバサ、帰郷後の一連の流れ。
【第1節】新暦90年の出来事。(前編)
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で一人もいなかったのです。
「教科課程」では、他の新入生らが全員、「中等科の教科課程」を学んでいる中で、カナタとツバサだけは「初等科の教科課程」から学ばなければなりませんでした。
(その一貫校には当初、初等科の教師が務まる人材などいなかったので、学校側はやむなく、この双子のためだけに、他の初等科学校から熟練の教師を引き抜いて来ました。)
カナタとツバサは、最初のうちこそ「同級生」たち(主に、女子生徒)からマスコットのように可愛がられたり、『7歳のうちから寮生活なんて大変だね〜』と同情的な目で見られたりしていましたが、やがて「訓練課程」が始まり、この双子が魔法実技に関しては自分たちよりもずっと優秀なのだと解ると、12歳児たちはみな掌を返すように態度を変え、カナタとツバサを遠ざけるようになりました。
ただそれだけでも、7歳児にとっては、相当にキツい状況だったことでしょう。
その上、この双子の母親が「あの、高町なのは」だと知れると、12歳児たちはもう「この双子への陰口」を隠そうともしなくなりました。
カナタもツバサも、もしも一人きりだったら、きっと耐えられなかったでしょう。最初から二人でいたからこそ、耐えられたのです。
二人とも、一貫校では友人など一人もできなかったのは、ごく当たり前のことでした。
一方、リミエッタ家のゼメクとベルネも、同じ90年の4月には、地元のソルダミス地方にある魔法学校の初等科に入学していました。
(ゼメクの方が30分ほど先に生まれて来たので、「お兄ちゃん」という扱いです。)
しかし、誰かに『双子なの? 似てないねえ』とでも言われたのでしょうか。ベルネは入学式の帰り道で、兄と手をつないだまま、ふと不満げな声を漏らしました。
「どうして、家族で、あたしだけ、髪が真っ黒なんだろう?」
もちろん、実の父であるクロノからの遺伝なのですが、ベルネ自身はまだそれを知りません。
「いいじゃん。黒い方がカッコいいよ。『闇の力』とか宿ってるみたいで」
ゼメクは7歳にして、早くも「中二病」のようなことを言っています。(笑)
「はあ。何、それ? 意味、わかんないんだけど」
ベルネはごく普通の人間として、ごく当たり前の反応を返しました。
ややあって、少女はさらに不満げな声を上げます。
「大体、ゼメクはズルイよ! パパによく似てて。……あたしももっと、ママに似てれば良かったのに」
(ええ……。そんなコト、言われても……。)
ゼメクは、やや気むずかしいところのある妹を何とかなだめようと、7歳児なりに懸命に知恵を振り絞り、やがて、母親(実際には、血がつながっていない養母)の父親が黒髪であることを思い出しました。
「それは……きっと、アレだよ。かくせーでん、ってヤツだよ
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