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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第186話:明かされる仮面の下
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筆談の手間も惜しんで、透が魔法で空中に文字を書きウィズとアルドに問い掛ける。確かに颯人は奏への愛を糧に、暴れる魔力を押さえ込み魔法使いとして覚醒した。であれば今回も耐えられるのではないかと透は考えたが、それはアルドにより否定された。
「いえ……今の颯人は、その時とは状態が違います」
「え……?」
「最初に魔法使いとして覚醒した時は、謂わば穴が空いた魔力の器に蛇口の付いた栓をするようなもの。対して今の颯人は、蛇口が付いた器そのものが内側からの内圧に負けて破裂しそうになっているようなものなのです。だか、ら……だから…………!?」
そこまで言って感情が抑えられなくなったのか、アルドはその場に崩れ落ちて噎び泣き始めた。それは何よりも雄弁に颯人に対しては手の施しようが無い事を意味しており、彼女の鳴き声が響き渡る医務室に重い沈黙が舞い降りる。
「うぅ、ぁぁぁ……!? こ、こんな……こんな筈じゃ……!?」
「ウィズ……本当か? 本当にもうどうしようもないのか?」
一縷の望みに賭けるように奏がウィズに問い掛けるが、ウィズは何も答えず俯き顔を背けた。
それを見た瞬間、奏は悲しみ以上に怒りを感じ、気付けばウィズに掴み掛り彼を壁に押し付けていた。
「何そんな簡単に諦めてんだよッ!? 何とかしろよッ!?」
「待って奏ッ!?」
「先輩押さえろってッ!?」
「天羽 奏ッ!?」
棚に入っている薬瓶なんかが床に落ちるのも構わず乱暴にウィズを壁に叩き付ける奏に、マリアとクリス、そしてサンジェルマンが慌てて奏を宥める。だが彼女は3人からの制止を振り切り、涙を流しながらウィズの襟元を掴み何度も彼を壁に叩き付けた。それは自身の無力さへの苛立ちへの裏返しでもあり、同時に戦いに颯人を駆り立てた彼らに対する怒りであるのも事実だった。
だがそれ以上に奏がここで彼らを許せないのは、彼らが足掻こうとせず既に諦めムードだったからに他ならない。何とか出来るなら奏だって何とかしたいのに、奏には魔力に関する知識が微塵も無い為何かをしたくても何も出来ない。大切な愛する男が苦しんでいるのを指を咥えて見ているしか出来ないのだ。しかしウィズ達は違う。彼らは魔力に関する知識がある。例え絶望的な状況だろうと、最後の瞬間まで彼らが足掻かず誰が颯人を助けると言うのか。
「うぐっ!? う、ぐぅぅぅぅぅ……!?」
颯人は苦しみながらも、死の運命に抗う様に脂汗を流しながら堪えている。当の本人が抗っているのに、ウィズとアルドの2人が諦めているのが奏には我慢ならなかった。
奏がここまで彼らに怒りを露にするのには理由があった。それは…………
「それが……それが…………
それが颯人の、自分達の息子に対する態度かよッ!!
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