第百三十二話 イベリスその五
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「そうしたいわ」
「そこまで気に入ったのね」
「お花も色々あるけれど」
「イベリス好きになったのね」
「今ね、他にも好きなお花は沢山あるけれど」
咲はここでその種類も話した。
「桜、薔薇、菫、椿って」
「それでイベリスもなの」
「好きになったから」
だからだというのだ。
「これからはね」
「見ていくのね」
「そうするわ」
「わかったわ、じゃあイベリスを気が済むまで観て」
愛はその咲を気遣って話した。
「それでね」
「そのうえで、よね」
「他のお花観にいきましょう」
「わかったわ」
咲は笑顔で応えた。
「じゃあ暫くね」
「イベリス観るのね」
「そうしましょう」
愛も笑顔で応えた、そうしてだった。
咲は暫くイベリスを観て愛は傍にいた、それから他の花や植物を観て回りイギリス風の庭園を模した場所にある喫茶店でだった。
一緒に紅茶を飲んだが愛はここで咲に尋ねた。
「美味しい?」
「ここの紅茶ね」
「ローズティーだけれど」
「美味しいわ」
笑顔でだ、咲は答えた。
「とてもね」
「それは何よりね」
「普通の紅茶とはまた違った」
「独特の味があるでしょ」
「本当にね」
「私も好きよ。だからね」
それ故にというのだ。
「今日は植物園だけでなくて」
「その中にある」
「この喫茶店にもね」
「案内してくれたのね」
「そうなの」
実際にというのだ。
「私もね」
「そのことも有り難う」
「ええ。けれど咲ちゃんイベリス一番観てたわね」
愛は笑って言った、その手にはローズティーのカップがありティーのかぐわしい香りが発せられている。
「やっぱり意識したのね」
「ええ、けれどね」
「それでも今は」
「思い出になったってね」
「観て実感したのね」
「そうなの。失恋したその時は本当に辛かったけれど」
それでもというのだ。
「今はね」
「思い出ね」
「それになっていて」
それでというのだ。
「辛くて苦しくて切なくて」
「そうした気持ちがあっても」
「けれどね」
「それと別によね」
「甘くて優しくて奇麗な」
そうしたというのだ。
「振り返ってよかったって思える様な」
「そんなものね」
「全体で見てね」
そうしてというのだ。
「いいもの。経験してよかったってね」
「思えるものなのね」
「そうなの。実らなくても」
そうであってもというのだ。
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