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Nalesha
Quatre
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わたしをやっかむ女職員の仕業だろう。そんなこと、別に今に始まったことでもないし、気にする事でもない。



恋とは本当にくだらないものだ。そして恋をしている女ほど愚かなものはない。



12歳のわたしと、23歳のルパンの仲を疑い嫉妬する。この男が愛しいひと(マシェリ)だの愛している(ジュテム)だのと言うのなど挨拶代わりで誰にでもしていることだろうに。



この男もフランスのスパイだ。



具体的になにをしているのかは知らないが、この男の美貌を任務に使わない手はないだろうから、マタ・ハリのようにハニートラップを駆使しているとみて間違いないと思う。



しかし人間は、「どこかの誰か」より「目の前にいる個人」のほうが、目に見えている分感情を籠め易いものだ。愛情も、嫉妬も。遠くの火事より背中の灸、というわけだ。



そして手近にいる自分より弱いものに、鬱憤をぶつける。



人間なんて、こんなものでしかない。



「また買ってこよう。何足でも」



「いらない」



「私が買ってきたいんだ」



なぜ、この男はこんなにわたしに構うのだろうか。



いつも浮かぶ疑問。



研究員はみんな、わたしを持て余している。愛想もない、子供らしくもなく、表情も出さない。喋らない。



当然だ。わたしも好かれなくていいと思っている。その方が、いざという時に殺しやすい。



けれど、この男は違う。



子供が好きなわけでもない、この男は、わたし自身を見てる。さっきの瞳もそうだ。わたしは、ルパンのあの瞳がすべて冗談だったなんて思えない。



この男は、この男なりの理由でもって、わたしに何か執着しているみたいだ。強く深い想いで以ってわたしの知らない、わたしを見ているみたい。たまに、恐怖を感じるほど。



恋愛なんて薄っぺらい感情じゃなくて、なにか、もっと違う…。



曖昧なままの思考はここで止まる。考えても、結論は出ない。本人に聞けばいいのだけれど、わざわざ聞くほどのことではないといつも流してしまう。
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