第一章
6.決断
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神官ハーゴン様、これは悪魔神官ハゼリオ様、そちらはベリアル様、バズズ様、アトラス様……遺骨は間違っていないはずです。あ、ハーゴン様は遺体がまだ見つかっていないので、今は代わりに壊れた杖を埋めています」
日数はもう少しかかりそうですが、遺体のぶんだけ作りたいと思います――。
そう言って仮面を掻くフォルに、少女が大きく息を吐く。
「よくもまあ、この状況でこんなことをする発想が出るね」
「ハゼリオ様だったらどうするのかな? と考えまして」
「悪魔神官の名前だっけ」
「そうです! 私の上司で、育ての親のような存在です。覚えてくださってありがとうございます」
「……。それで?」
「はい。あのおかたなら、きっと皆さんの墓を作るに違いないと思いました」
胡乱な目を向ける少女に対し、フォルは「あっ、いまお茶入れますから」と、椅子代わりにしていたがれきに座るように言った。
「おいしい」
「ありがとうございます。お茶の道具、ほぼ無事な状態で見つかったんですよ」
それに対しては「ふーん」とだけ感想を述べる少女。
二人はしばし未完成の墓地の景色を眺めていたが、やがてフォルのほうから話し始めた。
「ハゼリオ様は、私の両親の墓を作ってくださったのです」
「そうなの」
「はい。私は小さいときサマルトリアの外れに住んでいたのですが、当時伝染病が流行って両親が亡くなってしまいまして。でも病気が広まってしまうからということで誰も遺体に近づけなくて。暑い季節だったのでもう遺体は酷い状態になってしまったのですが、そんなときにハゼリオ様がやってきて、遺体を火葬して墓まで作ってくださったのです」
これよりはずっときちんとした墓でしたけど、と、フォルは苦笑いする。
「もしかして、キミがハーゴン教団に入信したきっかけって……」
「あ、そうですよ。その場で決めました。ついていきます、って」
「それ、割とよくありそうな勧誘の手口に感じるけど」
少女もまた、白いため息をつく。
お茶を飲むためにマフラーを下げているので、いつもより勢いのよい白さである。
「全員のお墓を作るってことは、すぐにロンダルキアを離れる気はないということだね。キミ」
「はい。そうですね」
「危ないのに」
「仮に危なくてもそれくらいはしないと、と思っています。それに――」
「それに?」
「誰かお墓参りに来てくれるかもしれないですから」
器を口元に運ぼうとしていた手がとまった。
ジトっとフォルの仮面を見つめる。
「あれ、何か変なこと言いましたか?」
「キミと話していると呆れないことがない。そんなの来るわけないでしょ」
「え? そうですか?」
「というかモンスターに埋葬だとかお墓参りだとかの風習ってあるの
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