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第五十話 死守その一
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                第五十話  死守
 嵐は井の頭公園に来た、既にその手には刀がある。
 そのうえで前を見据えている、その彼女の前に封真が出て来た。
「もう来ていたか」
「今来たところよ」
 嵐は封真に応えた。
「丁度ね」
「そうだったか」
「ええ、それではね」
「はじめるか」
「あまり気が乗らないみたいね」
「正直に言うとな」
 封真も否定しなかった。
「戦い自体がな」
「顔でそう言っていたわ」
「そうか」
「貴方は正直な人ね」
 封真にこうも言った。
「そのこともわかるわ」
「誉め言葉と受け取っていいか」
「ええ」
 嵐も否定しなかった。
「そうしてくれたら嬉しいわ」
「そうか、それなら礼を言わせてもらう」
 嵐に誠実さが感じられる声で答えた。
「俺もな」
「そうなのね」
「ああ、それでだな」
「これからね」
「戦うことになる」
「全力でいくわ」
 刀を両手に構えて言った、その構えは剣術の極意を備えたものだと見る者には見た瞬間にわかるものだった。
 その構えで以てだ、嵐はさらに言った。
「これよりね」
「ああ、俺もだ」
「ではね」
「はじめるか」 
 お互いに話してだった。
 二人は闘いに入った、お互いに宙を舞い力を放ち合う。嵐は刀封真は掌から攻撃を放つ。そうしながらだった。
 激しい攻防を繰り広げる、だが。
「!?」
「!?何だこの気は」
 嵐が動きを止めた瞬間封真も感じた。
「十字架にかけられた小鳥を前にした時と同じか」
「・・・・・・・・・」
「どうしたんだ」 
 闘っていた嵐が急に顔を下げてだ。
 苦しみだしたのを見た、そして異変が起こった。
「私は地の龍の一人」
「何を言ってるんだ」
「これからはその立場で戦う」
「!?まさか」 
 神威はこの時洋館にいた、そこでだった。
 公園の方におかしな気を感じた、空汰に彼が手当てを受けている部屋で話していたがそれが終わった時のことだった。
 公園の方を見てだ、神威は言った。
「起こったか、行って来る」
「待て、今あっちにおるのは嵐やろ」
 ここでベッドの中から上体を起こしている空汰が言って来た。
「それやとな」
「戦うつもりか、お前も」
「それは正直無理やと思うが」
「心配だな」
「ああ、そやから行ってええか」
「無理はするな」
 これが神威の返事だった。
「戦いならだ」
「自分に任せろっていうんやな」
「そうだ、いいな」
「ああ、今のわいは念仏は唱えられてもな」
 それでもとだ、空汰は真面目な顔で答えた。
「戦えるかっていうと」
「やはり無理だな」
「満足に力を出せん」
「それならだ」
「自分に任せるわ」
「そうしてくれ、ではだ」
「行こう
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