【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第9章】バルギオラ事変の年のあれこれ。
【第1節】新暦89年、8月までの出来事。
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う充分に「ベテラン」と見做されているのですが、彼女はまだそうした権利を何も申請していませんでした。
実のところ、ティアナの職歴の中では、〈マリアージュ事件〉のように「犯人を追って幾つもの世界を転々とする事件」はむしろ例外的なものであり、彼女が得意とするのは、もっぱら『特定の世界に滞在し、じっくりと時間をかけて捜査をする』というタイプの事件だったからです。
その上、その種のスタッフなど特に雇ってはいないので、無理にオフィスを構えても、ほとんど「ただの空き部屋」になってしまうだけでしょうし、また、小型艇に関して言えば、そもそもティアナもウェンディも操縦免許を持っていません。
ティアナも『小型艇は、あればあったで便利だろう』とは思うのですが、今さら『講習を受けて自分で免許を取ろう』と思えるほどの熱意はありませんでした。
自分のオフィスがあれば、上層部からの指示もそこで受け取れば良いのですが、ティアナの場合は、自分の方から相手のオフィスに出向かなければなりません。
ティアナは、今では「事実上の直接の上司」である参謀部主席次官ルアドロ・グロンダル少将(66歳)のオフィスを全く指定どおりの時間に訪れました。
ルアドロは、良くも悪しくも「典型的なゼナドリィ人」の将軍です。秘書がティアナを彼の部屋に通すと、形式的な挨拶や無駄な世間話など一切せずに、機械のように無機質な表情のまま、いきなり本題に入りました。
あえて良く言えば生真面目な性格で、ティアナにとっては、むしろ「余計な不快感」を覚えずに済むタイプの上司です。
「つい先日のことだが、第68管理世界サウティの〈西の大陸〉で、現地の捜査官が何者かに殺害された。どうやら、未知のロストロギアが絡んでいるらしいのだが、現地の陸士隊や並みの広域捜査官では、とても手に負えない案件のようだ。
そこで、我々は君をこの案件の適任者と判断し、殺害犯の特定と確保、ならびに、ロストロギアの回収を君に命じることにした。詳細はすべて、こちらにあるとおりだ。当面、現地の陸士隊とは接触せず、内密に捜査を進めてほしい。何か質問はあるかね?」
そう言って、ルアドロはティアナにこの事件の詳細なデータを手渡しました。ティアナは素早くそのデータに目を通して、思わず不平を漏らします。
「背景には、現地における『二つの犯罪組織』の抗争があるらしい……。これを私たち二人だけで何とかしろ、と?」
「あくまでも『当面は』の話だ。現地の陸士隊には内通者がいる可能性が高いからね。君たち二人は、取りあえず『サウティ〈中央大陸〉の地上本部から来た捜査官』という設定で動いてみてほしい。現地の地上本部には、すでに話はつけてある」
ルアドロはそう言って、今度は「偽の
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