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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
第七十六話 不安
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帝国暦485年1月20日12:45
ヴァルハラ星系、オーディン、銀河帝国、ヒルデスハイム伯爵邸、ジークフリード・キルヒアイス


 「息災かな、姉上は」
「無事息災ですよ、ラインハルト様。そもそもお元気でなければこちらへ来られる筈がないじゃないですか」
「それはそうだが…」
今日は久しぶりにアンネローゼ様と面会が許された日なので、ラインハルト様も少し落ち着きがない。私とてそうだ。あの方に会えるのはとても嬉しい。
「准将、グリューネワルト伯爵夫人をお連れしたぞ。すぐに菓子など用意させよう。伯爵夫人、ようこそ我が家へ」
ヒルデスハイム伯がアンネローゼ様を伴って客間に現れた。そしてそれに続く女性がもう一人。
「何故ワタクシの事は紹介してくださらないのかしら、ねえアンネローゼ」
アンネローゼ様に続いて入って来たのは、ヴェストパーレ男爵夫人だった。アンネローゼ様の宮中における数少ない友人だ。男爵夫人に辟易したかの様に、それではごゆるりと、と言い残してヒルデスハイム伯はそそくさと客間を出て行った。
「久しぶりね、ラインハルト」
「ええ、姉上もお元気そうで何よりです」
「ジークも元気そうね」
「はい、アンネローゼ様」
暖かい空気が流れ出す……。

 結局私がヴェストパーレ男爵夫人の相手をする事になった。幾人かの芸術家のパトロンでもあり、乗馬、競馬、狩猟、そしてスポーツカーと幾つもの趣味を持つ華やかな女性。物静かなアンネローゼ様とは真逆の方だが、だからこそウマが合うのかも知れない。
「ラインハルトが准将でジークが中佐。若いのに大したものだわ」
「そんな事はありません、運に恵まれただけですよ」
「あら、運も実力の内よ。それに家名だけで階級と実力が伴わない貴族の子弟はごまんといるわ。ワタシより貴方達の方がたくさん知っている筈よ」
「ハハ…男爵夫人が軍に居られたらどうなったでしょうね」
「そうねえ…でも、ワタシみたいな跳ねっ返りを使ってくれる人はいるのかしら」
「わたくし達が居ますよ。逆にこき使われているかも知れませんが」
「そうねえ…貴方達の様なハンサムを侍らせるのもいいかもね」
自由奔放、という言葉がこれ程似合う女性も中々居ないだろう。先代のヴェストパーレ男爵が、彼女が男であったらと口惜しそうにしていた事もあったそうだ。
「まあ、女が活躍するなんてこの帝国じゃ無理ね。フェザーンか叛乱軍にでも行ってみようかしら」
「男爵夫人」
「アハハ、冗談よ。でもたまにそう思う事もあるわ。貴方達は考えた事ない?」
私だけでなくラインハルト様、そしてアンネローゼ様も男爵夫人を見つめていた。
「男爵夫人、悪戯が過ぎるわ」
「冗談よ、冗談」
叛乱軍…自由惑星同盟に亡命…亡命など一度も考えた事はなかった。ラインハルト様はどうなのだろう
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