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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
第七十六話 不安
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って分かる。伯はミュッケンベルガーの言を借りて俺を安堵させようとしたのだろう。不安はあってもどんな任務でもこなしてみせるさ…。

 「他に懸念はないか?要望でもよい。当面の間、卿等に前線を任せる事となる。要望は最優先で通す」 
これは素直に有難い話だ。意外にミュッケンベルガーの立場は苦しいのかもしれない。イゼルローン要塞失陥以降の事態は、軍人であれば納得は出来なくとも正しく現実として受け止める事が出来るだろう。だが政府や暗愚な貴族には決して理解されない筈だ。そしてその非難は実戦兵力を率いるミュッケンベルガーに集中する…待てよ、そうなると俺達も非難の矢面に立たされる事になる…何の事はない、ミュッケンベルガーが倒れる時は俺も倒れるという事か。
「ご配慮有難うございます…ではこの者達の昇進の序列を上げて貰えますでしょうか」
手元の端末を操作して、俺は複数の名前を挙げた。名前を読み上げるミュッケンベルガーは少し怪訝な顔をした。
「ロイエンタール大佐、ミッターマイヤー大佐、メックリンガー、ケスラー…まだ居るな、全てヒルデスハイム艦隊の佐官達だが、指揮機能を向上させるという事か」
「それもありますが、彼等は全て小官が我が艦隊に集めた者達です。理由は、彼等は必ずや近い将来の帝国軍を支える能力を持つ者達だからです」
「ほう」
「皆下級貴族や帝国騎士、平民であるが故に上層部との繋がりもなく、また能力はありますがその出自故に不遇を囲っております。小官は彼等をヒルデスハイム艦隊に集め、彼等の能力を発揮させやすい環境を作ろうと考えました」
「だが、まだ足りぬと」
「はい」
「近い将来の帝国軍か。その中枢には卿も当然入って居るのだろう?」
「はい。否定は致しません。小官も帝国軍人の端くれであります。将来は、今の元帥閣下の地位にありたいと思っておりますので」
ミュッケンベルガーは一瞬黙った後、大笑いした。初めて聴く笑い声だった。
「将来は私の地位に、か。集めた者達は卿の子飼い、という訳だな」
言った後、ミュッケンベルガーは厳しい顔をした。その厳しい顔の意味するところに気付いたのだろう、伯も同じような顔をしている。俺の地位が上がり、俺が見出だした者達の地位も上がる。そうなった時、俺が見出だした男達の忠誠心はどこへ向くだろうか。
「まあいい。今は将来の話をしている時ではないしな。了解した。人事局とは話をつけておく。他にはあるか」
哨戒任務という事になると、ヴィーレンシュタインを根拠地として出張る事になるが、補給体制は大丈夫なのだろうか…そう思っていると、伯が同じ事を口にした。
「ヴィーレンシュタインでの補給は受けられるのでしょうか」
「手回しは済んでいる。心配いりません」
「了解致しました」
「伯、何時出撃出来ようか」
「その為の報告に参ったの
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