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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
第七十六話 不安
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トックハウゼン、ギースラーの各艦隊も損害を補充した後猛訓練に努めているから、練度は辛うじて維持している。だがフォーゲル、シュムーデ、マッケンゼンの各艦隊に関してはまだ練度、士気共に低く、艦隊級の対抗演習など無理、という有り様だった。ここから更に三個艦隊を新規に編成するとなれば、全艦隊が揃って出撃するなどいつの事になるのか…という話になってしまう。
 ヒルデスハイム艦隊に関しても急速に規模が大きくなったので状況は似ていた。だが、ウチに回されたフレーゲル、コルプトの両家の艦隊は、先年の出撃で被った汚名を晴らすべくそれなりに訓練に励んでいた様で、合流後もそれほどの練度低下にはみまわれずに済んだ。だが何しろ二万五千隻の大兵力だ。大幅な練度低下は避けられたと言っても細かい戦術運動が可能か、と言われると疑問符が付く。その上シューマッハ参謀長はメルカッツ艦隊に転属になったから、俺がそのまま参謀長に繰り上がったのだが、艦隊がこんな状況だから目の回る様な忙しさだった。シューマッハ参謀長はいいタイミングで転属しましたね、とキルヒアイスに笑われたものだ…。

 「おや、珍しく不安そうだな参謀長」
「はい。哨戒任務だけであれば問題ないのですが、もし遭遇戦になった時を考えますと、多少は」
「長官が目の前だからとて遠慮する必要はないぞ。麾下の艦隊の実状は長官とて知りたい筈だ」
 俺は遠慮なくヒルデスハイム艦隊の実状を話す事にした。別に今までも嘘の報告をしている訳じゃない。報告として数値化されたものと現実は違う、というだけだ。ヒルデスハイム艦隊二万五千隻、兵力AA。士気練度Bマイナス状態。Aを百点とするなら、Bマイナスは七十点というところだろう。兵力は通常の艦隊の二倍の艦艇数だから問題はない。問題なのは士気練度だった。評価だけ見ると良好だが、これは艦隊全体の練度の平均値なのだ。高い練度を維持しているのは元からのヒルデスハイム艦隊だ。後から加わった部隊が練度を下げている。艦艇ごとの評価の平均だから、恐ろしく練度の低い艦艇と高い練度の艦艇が混在している事になる。統一した艦隊運用に困難を感じるのは、俺でなくとも当たり前の話だった。
「成程、そういう事か。しかし卿等の艦隊は高く評価されておるのだ…艦隊だけではない、卿等の能力もだ。ヒルデスハイム艦隊が前線を支え、その間正規艦隊の能力の充実を図る。既に三長官会議で決定した事でもある…無論、卿等だけで戦えと申すのではない。こちらから叛乱軍に手を出す事はないが、無策で手をこまねいている訳にもいかない。此処から先は通さぬと、抑止力の象徴が必要なのだ。解ってくれ」
伯は新しい任務について既に知っていた筈だ。だが艦隊の状況が悪い事も気づいていた。細かい報告を受けなくてもいきなり図体が二倍以上に膨れあがれば、体の機能か追い付かない事ぐらい誰にだ
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