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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
第七十六話 不安
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に罰する事は出来ない。だが両家の犯した罪は反逆ととられてもおかしくはなかった。そこで内々の懲罰として軍に艦隊を供出させる事で、皇帝への忠誠の証とする…ブラウンシュヴァイク公は俺との約束を守ったのだ。両家の行為は人々の憶測を呼んだものの、表面上は称賛されるべき行為であるから、宮中の称賛を浴びた。あいつ等が称賛されるなど全く気に食わないが、こればかりは仕方がない。そしてこの件と釣り合いを取る形でリッテンハイム一門からも艦隊の提供があった。それがマッケンゼン艦隊である。マッケンゼン中将は帝国軍の少壮気鋭の正規軍人ではあるものの、リッテンハイム侯の息のかかった人物だった。大貴族の影響力をなるべくなら排したい軍首脳部の意向から昇進が遅れていたが、既にヒルデスハイム伯が軍に復帰している、それならば…と中将に昇進し艦隊司令官に抜擢された。リッテンハイム侯との関係性故にリッテンハイム一門から提供された艦艇の指揮を執るのに最適であろうと判断されたのだ。

 「やっと十個艦隊だ。どれだけイゼルローン要塞に頼りきりだったか、よく分かるというものだ。それに艦隊の整備が順調なのも昨年の戦いを軽微な損害で切り上げてくれたクライストや伯爵のおかげでもある。この通りだ」
ミュッケンベルガーが深々と頭を下げた。最近、ヒルデスハイム伯だけではなく、このミュッケンベルガーという男に対する見方も変わってきた。俺の知っているミュッケンベルガーは威厳はあるが傲岸極まりない男、という印象だった。それは今でも変わらないが、その威厳も傲岸に見える態度も宇宙艦隊司令長官という職を全うするには必要な物なのだ…と思うのだ。俺はまだ軍人としてはヒルデスハイム艦隊の参謀長に過ぎないが、否応なしに宮中…権力の中枢に近い場所に居るのだと昨年の一件で実感させられた。その場所と視点から見るミュッケンベルガーはただの傲岸な男ではなかった。将来は分からないが今の帝国軍には必要な男だろう。ブラウンシュヴァイク公もそうだ。まさかフレーゲルとコルプトから艦隊を取り上げるとは思わなかった。これであいつらもしばらくは大人しくなるだろう。
「伯爵、卿の艦隊にはまた面倒をかけてしまうな」
「身内の事でご無理を聞いてもらったのはこちらですからな、面倒などとは思っておりません」
「そう言って貰えると助かる。せめてもう三個艦隊ほど編成せねばならんのでな。頭の痛い事だ」
「アムリッツアの叛乱軍に今の所大きな動きはありませんし、哨戒任務であれば我が艦隊で事足りると思います。そうではないか、参謀長」
「はい」

 十個艦隊と数は揃ったものの、急速に編成された艦隊の練度は恐ろしく低かった。元からあったミュッケンベルガーの直卒艦隊、ケルトリング艦隊、メルカッツ艦隊は一定の練度を維持している。昨年の遠征軍に参加したクライスト、ゼークト、シュ
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