第七十六話 不安
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」
「そうですね、よくお似合いと思いますよ」
我ながら情けないがおうむ返しで答える事しか出来ない…笑うんじゃないキルヒアイス!大体だ、大貴族の令嬢なんだから自宅に業者を呼べばいいではないか!その方が出掛ける手間が省けていいだろうに!それにこんなにケーキばかり買い込んでどうするというのだ、そんな華奢な体で全部食べきれる訳がないだろう!それにケーキという物は形が崩れない様に持ち帰るのが大変なんだぞ。持たされる方の身にもなってくれ!
「…キルヒアイス、貴族の令嬢というのはこんなに買い物に時間がかかるものなのか?」
「貴族のご令嬢に限らず女性というのは買い物に時間がかかるものです」
「何故なんだ?目的の物を買うのが買物だろう?見ては悩み、悩んでは行きつ戻りつ…女性というのは買う物を決めずに買物をするのか?」
「買物という行為自体を楽しむのが女性なのですよ、ラインハルト様。買う事自体は二の次です」
「偵察、状況把握に徹するという事か」
「まあ、その様なものです」
そういう物なのか…しかしキルヒアイスはどこでそれを学んだのだ?……やっとハイデマリー嬢も満足した様だ、早く戻ろう…。
「お待たせしてしまった様ですわね、申し訳ございません」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
「一人で…お二方もいらっしゃいますが、わたくし一人で出掛けるのは初めてなのです。それで嬉しくてつい…普段は出入りの業者が家に来るか、使用人任せなので」
「そうなのですね…まあ、ヒルデスハイム伯爵家のご令嬢ともなればお一人で出掛けるのは中々難しそうですね」
「はい…でも思いきってお父様にお願いしてみてよかった!実は、その、お父様以外の殿方とお出掛けするのも初めてなのです…」
何故赤くなるんだ?もしや具合でも悪いのか?
「お顔が赤いですね、体調が優れないのですか?大事になるといけません、今すぐお屋敷に戻りましょう。キルヒアイス、悪いが荷物を頼む。ハイデマリー様、失礼します」
「え?あ、は、はい……あ、あの、ちょっと…」
停めてある地上車まではそれほど離れていないが、大事だったら伯に申し訳が立たない…抱き抱えて搬送するしかない…しかし女性というのは面倒なものだな…。
「ら、ラインハルトさま…あ、歩けますから…」
「ハイデマリー様のお体には代えられません、しばしご辛抱を」
「は、はい…」
1月30日14:00
オーディン、ミュッケンベルガー元帥府、
ラインハルト・フォン・ミューゼル
今俺はヒルデスハイム伯と共にミュッケンベルガーの元に来ている。昨年のフォルゲン星域での戦い以降大きな戦いもなく、正規艦隊の整備も進んでいる。今日はウチの艦隊の整備完了報告という事だが、それだけならば俺まで呼ばれる事はない。表向きではない話もあるのだろう。資料としては既に何度も目
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