第七十六話 不安
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「そろそろお暇しなくては」
「もうそんな時間ですか?いつも以上に短く感じるな」
「そうね…でもまた会えるわ。ラインハルト、悪いけどヒルデスハイム伯爵をお呼びしていただけないかしら」
「分かりました」
ラインハルト様が肩をすくめながら客間を出て行く。ラインハルト様の言う通り、いつもより時間が経つのが早く感じられた。久しぶりにお会いしたせいもあるのだろう。
「ジーク」
「何でしょう、アンネローゼ様」
「ラインハルトをお願いね。わたし達二人には貴方しか頼れる人が居ないの」
「お任せください。ラインハルト様はわたくしが誠心誠意お支えします」
「ありがとう…ラインハルトが誤る様な事があったら、うんと叱ってやって」
「大丈夫ですよ。ラインハルト様は、大丈夫です」
「本当にありがとう、ジーク…」
わたしは貴方達お二人に頼られる事が嬉しいのです。この身に代えてもお二人をお守りします…。
アンネローゼ様を乗せた宮中からの地上車が邸宅を出て行くと、ヒルデスハイム伯が大きく息を吐いた。
「…閣下、どうかなさいましたか?」
「准将、貴官も大変だな。娘を持つ親としては見ている此方が切なくなる」
「いえ…姉が皇帝陛下の寵を得た結果、小官やキルヒアイスはこうして身を立てられたのです。感謝してもしきれません」
あの男を陛下と呼ぶ時のラインハルト様の顔からは、いつも表情が消える。
「そうか…それならばよいが」
伯は多分気づいているだろう、ラインハルト様の胸中が口にした言葉とは真逆である事を……。
「二人ともどうするかね、たまにはウチで夕食を食べていかないか」
「お邪魔ではありませんか…宜しいのですか?」
「私が誘っているんだぞ、いいに決まっているだろう」
「…ありがとうございます、お言葉に甘えさせていただきます」
「実はな、娘がそなた等をいたく気に入っているのだ。娘を甘やかす馬鹿親だとでも思って我慢してくれ」
「そうなのですね、では閣下の為ではなくご息女の為にお邪魔させていただきます」
「ハハ、言ってくれるではないか…済まんな二人とも」
アンネローゼ様と会われた後という事で、ラインハルト様も少し感傷的になられたのかも知れない。二人で頑張って伯のご息女の相手をするとしよう…。
16:30
ラインハルト・フォン・ミューゼル
ヒルデスハイム伯の娘の名はハイデマリー、十四歳になるという。夕食まではまだ時間があるし折角俺達が居るのなら、という事でハイデマリー嬢の買い物に付き合わされる羽目になった。年下とはいえ女性の買い物になど同行した事がないのだが、閣下のご息女の為にと言ってしまった手前断る事も出来ない。護衛と思えば気も楽になりますよ、とキルヒアイスは言ったが…。
「この首飾り、似合うと思いまして?
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