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八条学園騒動記
第七百三十一話 密林の生きもの達その三

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「その通りです」
「そうであるし坂本は脱藩してな」
「土佐藩を縁がなくなって」
「尚更だ」
「二人は会わなかったですか」
「それでどうしていじめたり出来る」
 会ったことのない相手をというのだ。
「不可能だな」
「左様ですね」
「むしろ二人はお互いを高く評価していた様だ」
「そうなのですか」
「同じ攘夷派の志士としてな」
 その立場でというのだ。
「共通の盟友がいてお互いの話を聞いていてな」
「お互いを高く評価していましたか」
「板垣は身分の低い者に寛容だった」 
 自分の身分に胡坐をかくどころかというのだ。
「人の話をよく聞いたしな」
「身分が低い相手も」
「何でも言ってみてくれという位な」
 こうした逸話もある、器も備えた人物であった様だ。
「そうだった、そして坂本の脱藩の咎もなくす様に動いている」
「むしろ坂本の味方ですか」
「そして坂本も板垣の話を聞いてだ」
 そうしてというのだ。
「同志にこうした者がいると紹介もしている」
「そうしていますか」
「お互い会ったことはないが」
 それが事実だがというのだ。
「お互いを高く評価していてだ」
「味方同士でしたか」
「そうだった」
「坂本は確か」
 上等兵はバク達を観つつ上等兵に話した。
「幼い頃は」
「泣き虫で夜尿症があってな」
「学問も駄目で」
「かなり評価が低かった」
「そうでしたね」
「成人しても奇行が目立った」
 落ち着きのない人物であったという、それもかなり。
「そうだったからな」
「藩ではですね」
「悪く言う者がいたが」
 それでもというのだ。
「板垣は偏見なくな」
「坂本を評価していたのですね」
「そうだった」
 その実はというのだ。
「郷士と言っても偏見を持たずな」
「彼の今を見てですか」
「過去も聞いていただろうがな」
 いじめられよく泣いて夜尿症で学問が出来なかった彼の幼い頃をというのだ、坂本の学問は成人してから備えたものなのだ。
「しかしな」
「それでもですね」
「今の彼の話を聞いてな」
「評価していたのですね」
「そして脱藩の咎もだ」
「取り消す様に動いたのですね」
「おそらく坂本の同志達に頼まれてな」
 そのうえでというのだ。
「そして彼の同志の志士達への弾圧もだ」
「行っていなかったですか」
「行った様に罹れている作品もあるが」 
 創作の中にはというのだ。
「彼も志士だった、同志を殺す様な人物だったか」
「今のお話を聞きますと」 
 どうかとだ、上等兵は答えた。
「何があろうとも」
「行わないな」
「そうした人物と思いますが」
「卑怯でも残忍でもなかった」
 板垣退助という人物はとだ、大尉も言った。
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