第二章
[8]前話
「四百年も違うから」
「厩戸皇子、聖徳太子が植えられた木ではないですね」
「科学的に考えるとね」
「そうですね」
「ああ、しかしな」
「子孫ですね」
「皇子が植えられて」
飛鳥時代にというのだ。
「その子孫がだよ」
「今も二つの町にありますね」
「東近江市にな」
「そういうことですね」
「ああ、ただな」
「ただ?」
「思えばな」
腕を組んでだ、老人は学者に話した。
「その頃から今もな」
「木が子孫でも残っていることはですか」
「凄いよな」
「そうですね、千数百年前ですからね」
「その頃から残ってるからな」
「ええ、そして皇子が願われた様に」
「それでだよ」
老人は学者に話した。
「今も仏教があるんだからな」
「滋賀県にも」
「凄いよ、そうなったのはな」
それはというと。
「皇子のお願いがな」
「適いましたね」
「二本の木はその象徴だな」
「そうですね」
学者もその通りだと頷いた。
「まさに」
「ああ、だからこれからもな」
「どちらの木もですね」
「大事にしないとな」
老人は確かな声で言った。
「そうしないとな」
「駄目ですね」
「ああ」
「そうですね、ではこれから」
学者は確かな声で言った。
「その二本のハナノキ達をです」
「その目で見て来るか」
「そうします」
こう答えてだった。
学者は実際に二本のハナノキ達を見た、するとどちらの木も立派に立って花を咲かせていた。その姿はまさに皇子の頃のままであったが彼が知る由もなかった、それでだった。
見た後で老人にだ、彼は笑顔で言った。
「子孫でもですね」
「今も立派にあるだろ」
「はい、皇子のお心はです」
御仏に対するそれはというのだ。
「今もありますね」
「そうだよ、だからな」
「地元の人達もですね」
「今も大事にしてるんだよ」
そうしているというのだ。
「本当にな」
「そうしていますね」
「ああ、今もな」
皇子のお心を汲んでというのだった、そしてだった。
学者はこのことを大学に帰ると論文に書いた、そうしてまた書こうと思うのだった。
太子の霊木 完
2023・7・12
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