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王昭君の柳
第二章

[8]前話
「だからな」
「それ故にですね」
「柳の木を宮中の庭に植えられて」
「それで、ですね」
「あの方の木とされますね」
「そうする、そしてだ」 
 そのうえでというのだ。
「彼女のことを後の世にも伝えよう」
「わかりました」
「ではそうしていきましょう」
「これからも」
「そうしましょう」
「その様にな」
 こう言って以後柳を王昭君の木とした、そしてこの話は彼女の夫であった単于にも伝わった。だが。
 その話を聞いてもだ、単于は鏡を見るばかりだった。それで周りに聞かれた。
「あの、漢では柳を餓えてです」
「お妃様を偲ばれていますが」
「単于様はされないのですか」
「それは」
「この国のことは知っていよう」
 単于は彼等に苦い顔で答えた。
「漢の地とは違う、この国の地は草ばかりだ」
「木はあまり育ちません」
「漢の地と比べて」
「どうしても」
「あの国とは何もかもが違う、だからだ」
 それ故にというのだ。
「柳はな」
「餓えず」
「それで、ですか」
「鏡をご覧になられますか」
「鏡に見えるのだ」
 王昭君、愛しかった彼女がというのだ。政により夫婦であったが彼は美しく儚い彼女に魅力を感じ確かに愛していたのだ。
「それならな」
「それでいいですか」
「そこでお后様にお会い出来るので」
「だからですね」
「もう充分だ」
 こう言ってだった。
 鏡を見るのだった、そのうえで周りに話した。
「余はこうしているとな」
「お后様を見られる」
「それで充分ですか」
「柳を植えられずとも」
「植えても生きないしな」
 この地ではというのだ。
「ならいい、ではこれからもな」
「鏡をですね」
「ご覧になられ」
「そこに映るお后様を見られ」
「偲んでいかれますか」
「それだけでいい」
 単于はまたこうしたことを言った。
「余はな、だが漢に伝えるのだ」
「あの国にですか」
「お后様の国に」
「余も同じだとな」
 単于もというのだ。
「后、王昭君を忘れぬとな」
「わかりました」
「ではあちらに伝えます」
「そうさせて頂きます」
「そのことを頼む」
 こう言ってだった。
 単于は鏡を観続けた、そのうえで王昭君を偲んで生きていった。
 王昭君は柳の様な身体を詠われたが柳の木自体にも縁があった、そして人々は柳を見ると彼女のことを想う様にもなった、このことは今も伝わっている。そのうえで鏡に彼女を見て偲んだ人もいた、それだけ彼女が美しく愛されていたということか。儚い一生を送ったが想う人はその時も多く今もである、この琴は紛れもない事実である。


王昭君の柳   完


                    2023・8・13
[8]前話


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