第三章
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「一人殺されてあれこれやってるうちにね」
「また一人そしてまた一人とか」
「犠牲者出て来るでしょ」
「そうなりますね」
「そうなることはね」
どうにもというのだ。
「尚更思うのよ」
「起こってからじゃなくて」
「事前に防ぐ様にしないとね」
「駄目ですね」
「そう言うと警察官はお医者さんみたいに」
「起こったことをどうするかも大事ですが」
「それ以前にね」
「起こらない様にすることですね」
「それが第一だってね」
その様にというのだ。
「思うわ」
「そうですか」
「起こってしまったことを解決するのは痛快でも」
「シャーロック=ホームズとか」
明星は名探偵の代名詞であるこの人物の名前を出した。
「そうですね」
「まず起こらない」
「事件は」
「それがいいわ、警察官が暇なら」
「それが一番ですね」
「そうよ、名探偵よりもね」
「まずは名探偵がいない」
「そうした社会が一番よ」
即ち事件が起こらない社会がとだ、冴子は言った。
「本当にね」
「平和が一番ですね」
「そうよ、じゃあ準備してくれたし」
部屋の中のテーブルの上に缶ビールやポテトチップスや柿の種が置かれていた、今まさに飲むという状況だ。
冴子はそれを見てだ、本を閉じて言った。
「飲みましょう」
「はい、ですが全部先輩が出してくれるなんて」
「今日はね」
「それで折角と思って私が準備しましたが」
「それでお互いね、じゃあね」
「今から飲んで食べて」
「楽しみましょう」
こう話してだった。
二人で飲んで食べた、そしてだった。
翌朝二人で出勤した、冴子は当直員だった同僚から昨夜の状況を聞いて一緒にいる明星に笑顔で言った。もう警官の制服に着替えている。
「昨日の夜は平和で何よりね」
「そうですね」
明星もそれはと頷いた。
「犯罪も事故もなくて」
「そういうのが起こってからよりもね」
「起こらないことですね」
「そうよ、それが一番で」
それでというのだ。
「何よりもいいのよ」
「そういうことですね」
「じゃあ今からね」
「今日も平和になる様に」
「働いていきましょう」
「わかりました」
二人で話してだった。
元気に勤務に入った、そして共に平和が第一でそれを守ることこそが警察官にとって最も大事なことだと平和な中で思ったのだった。
事件が起こるよりも 完
2023・7・15
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