暁 〜小説投稿サイト〜
山姥退治
第二章

[8]前話 [2]次話
「ですが」
「それよりもか」
「そうしておけばです」
「山姥は退治出来るか」
「左様です」
「若し山姥が生きておればどうする」
 義満は一休にその場合について尋ねた。
「それで」
「その時は私をあの山に行かせて下さい」
「そなたが山姥を退治するか」
「そうします」
「そこまで言うならやってみよう」
 義満は一休にそれならと述べた。
「余にしてもそんなことで退治出来るならよい」
「お侍様を何人も送るより」
「それで済むならな」
「それでは」
 こうしてだった。
 山姥が棲む山の麓に多くの生の川魚を入れた大きな桶が幾つも置かれた、そして翌朝桶達を置いた場所を見ると。
「桶が全部空になっていましたか」
「うむ、そこに入れた魚達は全てな」 
 義満は一休に話した。
「頭から尻尾までじゃ」
「食べられましたか」
「そうなったそうじゃ」
「では暫く経てばです」
 一休は微笑んで述べた。
「山姥はいなくなります」
「そうなるか」
「はい」
 確実にというのだ。
「そうなります」
「そうか、では暫く待とう」
「それでは」
 一休も頷いた、そしてだった。
 暫くして山の麓の村から話が来た、その話はというと。
「山姥が死んだそうじゃ」
「左様ですか」
「何でもな」
 義満は一休を花の御所に呼んで話した。
「川辺で恐ろしい顔で倒れておったそうじゃ」
「何かあちこちに瘤があってな」 
 身体のというのだ。
「蠢き片目は潰れ」
「そうした有様で、ですか」
「倒れておったそうじゃ」
「私が思った通りの結果です」
 微笑んでだ、一休は義満に答えた。
「これは」
「どうして山姥は死んだのじゃ」
「虫です」
 一休は微笑んで答えた。
「山姥は川魚を生で食べましたね」
「桶の中のな」
「それを全部食べたので」
 幾つもの桶の中の魚達をというのだ。
「虫にあたったのです」
「魚の中に巣食う虫達か」
「将軍様もこの虫のことはご存知ですね」
「随分性質が悪いな」
 義満は即座に答えた。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ