第八十五部第四章 メキシコの思惑その二十五
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「残しました」
「それを捜査に活用している」
「そうしています」
まさにというのだ。
「私は」
「そうなのですね」
「はい、ただ」
「ただとは」
「今切り裂きジャックが出たら」
鋭い目での言葉だった。
「必ずです」
「捕まえますか」
「はい」
絶対にというのだ。
「そうします」
「そうですか」
「そしてです」
そのうえでというのだ。
「犠牲者はです」
「出させない」
「何があろうとも」
決意を以ての言葉だった。
「最初は出ても」
「事件が起こったならですね」
「第二第三の犠牲者は出させない」
「そうしますね」
「理想は最初からです」
それこそというのだ。
「そうした事件を起こさせない」
「それが重要ですね」
「物事には常に前兆があります」
ドトールは強い声で言った。
「左様ですね」
「快楽殺人者もですね」
「はい」
まさにというのだ。
「必ずです」
「前兆がある」
「左様ですね」
「韓非子でもありますね」
「中国の思想家の書ですね」
「はい、法家の」
そう呼ばれる思想家の一人だ、幸薄い人生を送りそうして非業の死を遂げた人物としても知られている。
「その書でありましたね」
「確か」
アラガルはドトールの話を聞いて応えた。
「象牙の箸ですね」
「殷の紂王の」
「それを見て紂王の臣下が危惧を感じた」
「そこから果てしない贅沢に走ると」
「酒池肉林の」
紂王はこの贅沢で知られている、文字通り酒の池を作り木々に肉を多く吊ってそこで宴を開き乱痴気騒ぎを楽しんだのだ。
「そうしましたが」
「その前兆がです」
「象牙の箸でしたね」
「実際にあったかといいますと」
この象牙の箸の逸話がとだ、ドトールは話した。
「実は中国で箸がかなり広まったのは漢代前期からで」
「殷代にはなかったですね」
「その様なので」
韓非子の生きた頃には出て来た頃であった様だ。
「ですから」
「それで、ですね」
「この逸話は創作でありますが」
「それでもですね」
「物事に前兆がある」
このことを話すにはというのだ。
「まさにです」
「その通りですね」
「快楽殺人者もです」
そうした者達もというのである。
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