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冥王来訪
第三部 1979年
孤独な戦い
威力偵察 その2
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風味の香りがするシガリロをふかした後、口を開いた。
「これで、合衆国はG元素爆弾の他に切り札を持ったことになる。
安心して、月面降下作戦の計画をすすめたまえ」
 副大統領に最初に質問をしたのは、国防長官は、
「近々行われる月面攻略に関してですが……」
 閣僚の中には困惑の色を示すものも少なくなかった。
FBI長官、保健教育福祉長官、運輸長官などの内政を担当する閣僚たちであった。
(保健教育福祉省とは、1959年から1980年まで存在した米国の省庁)
そんな彼らの事を気にせずに、国防長官は続けた。
「さしあたっては、合衆国の中から、精鋭100名ぐらい募ってはいかがでしょうか」
 話を聞き終えた副大統領は、しばし黙考した後、口を開く。
その様は、どこか満足げな風であった。
「では大統領閣下……
よろしければ、月面降下の計画を国防長官から説明してもらいたいと思いますが……」

 国防長官の口から、月面降下の作戦が語られた。
NASAと米軍の案は、至極簡単なものだった。
 地上から飛ばしたスペースシャトルを、まず大気圏外にあるステーションに泊まらせる。
そこで、事前に建造しておいた戦術機用のカーゴ船を連結し、月面に向かう。
 地球上で行わないのは、シャトルの推進剤の使用量をわずかにするためである。
戦術機のような大規模な装備を送るとなれば、月面までの距離は遠い。
 それに莫大な燃料も必用だからである。
燃料が大量に残っていれば、月面から万が一の際に帰還できる。
降下作戦をサクロボスコ事件の二の舞にしないというものだった。

「以上の理由から、基礎的な素材を少し持ち込むだけで、月面攻略は難なく進むことでしょう。
ハイヴにあるG元素さえ、我が合衆国の手に入りさえすれば……
それを活用し、何でも作ることが出来ることは、疑いようもございません」
 国防長官の言葉をつなぐようにして、副大統領は相好(そうごう)を崩す。
「国防長官の案は私も検討しましたが、今の所、それがベストでしょう。
英国やフランスをはじめとするEC諸国にもアプローチし始めています」
 国防長官も同じだった。
この際、常任理事国の英仏も巻き込んでしまえと、まくし立てる。
「使い捨ての肉壁となる戦闘要員も、各国から集めつつあります」
 国務長官の言に、国防長官は冷ややかな視線を送る。
使い捨ての肉壁という言葉は、彼の気持ちに衝撃を与えたようだった。
「ただし、極めて厄介な問題がございます。
ソ連をどうやって納得させるかという事です」
 満座の者たちの意見は、ほぼ彼と同じだった。
たしかに、ソ連をどう納得させるかは重要であった。
 BETAに惨めに負け、ゼオライマーの元にも敗れ去った。
だが、いまだ世界最大の核保有国であり、ICBM
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