第三部 1979年
孤独な戦い
威力偵察 その2
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、
「あのV2ロケットを作りし、航空及びロケット工学の泰斗。
ゲシュタポにつかまった際には、ヒトラー手づから助命嘆願をしたそうですな」
「悪魔にすら魂を売った世紀の大奇人。」
「彼については、私も聞いたことがあります。
晩年はオカルト思想に溺れた狂人でしたな」
と交まぜかえした。
こんな冗談も出るほど、うち解けていたのである。
「それくらいにしたまえ。
さて、そんな彼は、BETAの太陽系進出を恐れ、ある遺言を残した」
「さあ、聞かせてもらおうではないか。フォン・ブラウン博士の遺言を」
「はい」
「博士は、この太陽系に人類が留まることを危険に感じていたのです……」
「博士が存命だった一昨年までは、ユーラシアの大部分はBETAに占領されていたからね」
「今も月面にはハイヴがございます。時間の問題かと……」
「うむ」
「では聞くが、人類にとって安全な場所はあるかね」
「お見せします」
NASA局長は、部屋を暗くし、スクリーンを用意すると映写機を回し始めた。
そこには、何やら建造中の巨大な宇宙ロケットのような物が映し出された。
建造作業に参加していた戦術機のと比較を見ると、およそ20倍ほどの縮尺であろうか。
その大きさは、横倒しにすれば空母エンタープライズと同じ320メートルの大きさだった。
映写機が回る中、しばらくの間沈黙が続いた。
ホワイトハウスの老主人は、つぶやき、眼をほそめる。
「ほう、たいしたものだね。素晴らしい設備だ」
「お褒めにあずかり、光栄にございます」
NASA局長は、最敬礼の姿勢を取った。
そして居住まいをただした後、画面に映る巨大戦艦の説明を始めた。
「これはバーナード星系に行くためのロケットです」
バーナード星系とは、地球から6光年以上離れたへびつかい座にある惑星群の事である。
天体観測から、人類が居住可能な惑星が存在するとされている場所である。
「博士はバーナード星系こそ人類安住の地と思っていたのです。
第4のローマ帝国を、新時代のギリシャ共和制を作り上げるのもバーナード星系でならばと!」
男の驚くべき発言に、周囲も動揺していた。
6光年も先の、バーナード星系に移住する計画などというのは夢想だにしなかったからだ。
「15年かけて完璧につくった核パルスエンジンの宇宙船、このダイダロス10号。
合成ケロシン燃料や全固形燃料ロケットなどの、今までのガラクタとは、違うのです」
「そうだったのか」
大統領は、ただ驚きあきれる。
それに対して、閣僚たちの反応は、様々だった。
「予想以上だ」
「素晴らしい。
私たちにもこんな手札が残っていたとは……」
その話を黙って聞いていた副大統領は、同時に何か考えている風だった。
一頻り、バニラ
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