暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第三部 1979年
孤独な戦い
威力偵察 その2
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ておりますね」
「ああ」
「閣下。NASAの方では、これらの事象は人為的なものと考えております」
「それで……」
「実は土星までパイオニア計画で無人機を飛ばしたのを知っておりますね」
「1962年の事だったね」
「閣下、その通りでございます。
あの時に木星と土星にそれぞれ10号と11号が接近して、ガニメデとタイタンからの映像を得ました。
何かしらの構造物や生命体らしき存在を認知しておったのですが……」
 懺悔(ざんげ)とともに、NASA局長が言った。 
「時勢も時勢でしたので、公表はケネディ大統領によって差し控えられておりました」
「ダラス事件がなければ、変わったかね」
「それは何とも言えません」

「NASA局長、続けたまえ」
「我々はそれから再分析したのですが……BETAの支配域であることは間違いのない事実でした」
 NASA局長は詫びぬくが、しかし閣僚たちは、ただ笑っていた。
少し離れた位置にいる国防長官が、ようやく口を開いた。
「問題は、大規模な戦闘兵力をいかに素早く送ることですな。
現状ですと、スペースシャトルによる(ネズミ)輸送しかありません」

 (ネズミ)輸送とは、大東亜戦争時に帝国海軍が行った駆逐艦による輸送作戦の事である。
当時のガダルカナル島では米軍に制空権を奪われていた。
 その為、同島への部隊輸送・物資補給は困難を極めた。
低速の輸送船ではたちまち戦闘機や潜水艦の餌食になる。
 そこで海軍軍令部が思いついたのは、高速の駆逐艦を利用して行った輸送方法である。
駆逐艦に積める物資を、何度繰り返すことで日本軍の補給路を維持する。
その規模があまりに少なく足りなかったため、前線部隊がそのように揶揄したのであった。


「だが、他にも方法はある。輸送船は何もスペースシャトルとは限らん」
「!」

 ここで読者諸兄も、月面に大規模な派兵に対して疑問に思うだろう。
2020年代の今ですら精々月に有人船を送るのは至難の業、ましてや1970年代は無理ではと。
 マサキが来た並行世界は、我々の知る世界の歴史と大きな乖離があった。
まず1944年に、日本が降伏したばかりではない。
1950年に米国主導で月面着陸が成功し、8年後に火星探査船バイキング1号が火星の調査を終えてた。
 火星の調査を終えた米国は、次の段階に宇宙開発事業を進めた。
それは、太陽系外への学術調査である。
 核パルスエンジンを使用した無人探査船の建造は、地球軌道上で行われた。
調査船発射用の宇宙ステーションとともに調査船イカロス1号も衛星軌道上で建造されたのだ。


「諸君は、フォン・ブラウン博士を知っておるかね」
 質問とともに、副大統領が言った。
すると、国務長官をはじめ、みな吹き出して
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