第三部 1979年
孤独な戦い
威力偵察 その3
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の育ちとは思えない」
ヤウクはつぶやくように、そういってから、眼をバルクに向けた。
「この大戦争の時代、生きようと思ったら這い上がるしかねえ。
生きるも死ぬも自分の能力さ」
バルクは、得意になって、相好を崩しながらヤウクはへ言った。
ヤウクは、苦笑をもちながら、ただうなずいた。
「つまり僕たちが生き残るには、方法は一つしかない」
「頭になるしかない」
「君の話だと、国を乗っ取るしかない」
問われたことには答えず、バルクは、タバコを吸い終ると、こういって、ヤウクの方をふり向いた。
「おめえさんが担いでいるシュトラハヴィッツ。
あの爺を神輿にして、東ドイツの世論を統一にまとめる。
そして、統一ドイツの旗、ブルッセルにおっ立てる!」
変な事を、臆面もなく言う男。
ヤウクは、感心しているような、またすこし、鼻白んだような面持ちで、まじまじと、バルクの口元を見まもった。
「これは木原が作ったグレートゼオライマーの資料映像だ。
土産に不足はねえだろう」
「確かに土産に不足はない。だけどそんなもので動く簡単な話ではない。
しかも、君の肚の中にある真意はつかめていない」
ヤウクは、当然なことを、当然いっているような態度である。
「駄目ってことか……」
バルクは、一応口をつぐんだ。
けれどヤウクは、それを不愉快らしくは少しも聞かなかった。
むしろこういうはっきりした男も、大いによろしい。
「だけど君は僕に気に入ることを一つ言った」
バルクは、使うには、使いよいことなども考えられた。
いや多分にそういう男であるから、さして不快とする理由もなかったのである。
「統一ドイツの旗、ブルッセルにおっ立てる」
「フッ、それでいいんだよ。
他人が何考えてようが関係えねえ」
「俺たちの目的は、同じ場所にある。
だから同じ月面作戦の船に乗る。
同じ作戦に参加したからって、一生親友って間柄じゃねえんだ」
「これは面白い冒険になりそうだね」
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