第三部 1979年
孤独な戦い
威力偵察 その3
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各種軍学校での経歴なども、加算したものとする。
BETA戦争での従軍歴が1年以上あれば、勤務歴5年と計算する。
第一、第二の条件に比して、第三の条件は非常に厳しかった。
当該人物の戸籍はおろか、婚姻歴、子の有無、交友歴まで調べられた。
正式な法律婚ではなくても、愛人との間に子供がいればアウトだった。
子供の状態は、成人していても、胎児の状態でも、いることが判明すれば、選抜から蹴落とされた。
幼い頃から宇宙飛行士の夢を持っていたユルゲンは、当然この選抜に参加した。
ベアトリクスにあてた離縁状と共に血判状を書いて、東独大使に提出するほどだった。
だが結果から言えば、彼は選考から有無も言わさず除外された。
つい先ごろ、ベアトリクスが生んだ息子のためである。
選考から漏れたのは、ベアトリクスの件ばかりではなかった。
実は彼の傍にいた人物が原因だったのである。
NASAは選考にあたって、ユルゲンの傍にいた人物への徹底的な身辺調査をした。
その際、彼の護衛兼秘書でもあったマライ・ハイゼンベルクからある問題点が浮上した為である。
ユルゲンの同級生であり、彼の副官であったヨーク・ヤウク少尉。
彼は、ちょうど英国のサンドハースト陸軍士官学校に留学中だった。
ヤウクも、ユルゲンの顰に倣って、もちろん選考に参加した。
そして1度目にして、合格した。
選抜をしたのが、英国空軍であった為もあろう。
彼は、東ドイツ人で、NATO非加盟の国家の出身。
しかも身長が規定より一センチ足りなく、本来ならば一発不合格である。
どんなに望んでも、再試験に回されたであろう。
だが、彼は熱心に自己アピールをして、担当官を口説いた。
独身で、反ソ感情の強い人間が月面に立ってハイヴ攻略に参加したことを示せば、ソ連への牽制になるという内容である。
英国空軍の担当官は、鬼気迫るヤウクの態度に感銘を受け、彼を推薦することにした。
東独空軍士官学校次席で、実戦経験豊富な人物である。
死地からも幾度となく、ほぼ無傷で生還してきた男である。
彼は難なく、筆記試験と実技を通り越し、晴れて攻撃隊のメンバーに選ばれたのだ。
ドイツ系ロシア人のヤウクにとって、ロンドンでの生活は刺激的だった。
流行りのパンク・ロック音楽、会員制のクラブ。
自由にモノを言える社会に、だれでも自動車を買える資本主義制度……
華やかな面ばかりではない。
当時の英国は、1960年代から続く長い停滞の時代に入っていた。
戦後長く続いた労働党政権による、国民福祉政策。
それは産業の分野まで影響し、より保護主義的なものとなった。
相次ぐ企業の国有化に、慢性化するストライキ。
頼みの綱となっていた自動車産業は、国有化のために国際競
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