第三部 1979年
姿なき陰謀
如法暗夜 その1
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1979年に入ってからのマサキは、思うように動けなかった。
それは彼自身が、すでに国際政治の陰謀の中にいる為でもある。
だが、それと同時に気を遣うようなことが増えたためである。
日米両政府、対ソ関係から陰ながら重視した中共政権。
ユルゲン、アイリスディーナのベルンハルト兄妹、ベアトリクス・ブレーメ。
彼等を筆頭とした東ドイツの面々などのためである。
先ごろ行われた、カナダでの国連軍に関する協議を潰すのに、労力を取られたのも大きかった。
この決議を潰すのに、マサキは海水から作った純金200トンをカナダの政財界にばらまいた。
その結果として、会議自体をご破算にしたのだ。
その手法は、核保有国の常任理事国による提案は受け入れられないという形をとった、非暴力の大規模デモだった。
マサキが関与したと足がつかぬように、準備した。
バンクーバー在住で、西ドイツ出身のクリストファーという青年を200万ドルで買収し、反核運動を組織した。
反核運動を組織するにあたって、日本の原水爆反対運動を参考にした。
会議に参加する各国の国連大使に、陳情や請願という名目で押し掛ける手法を行った。
夜討ち朝駆けは、当たり前。
太鼓や銅鑼を鳴らし、聖書の一説を読経させて、相手の思考力を奪うという方法であった。
カナダの警官隊もこの非暴力のデモに対して、騎馬警官隊を繰り出した。
だが、次第に流血の事態になると、世論はデモ側によることとなった。
ニューヨークの国連本部前では、キリスト教・イスラム教・仏教などの各宗教の聖職者を集めた。
無制限のハンガーストライキなどを行い、国際的に注目を浴びるように工作したのであった。
国内世論の反対を受けたアメリカの態度変化は、西側諸国の足並みの乱れを招いた。
「統括のない戦闘がBETA支配領域拡大を招いた」という事で始まった協議は、結果として物別れに終わった。
東京での、第五回先進国首脳会議が近づいていたある日。
マサキは、京都市内の篁家の一室にいた。
ミラが用意してくれた戦術機の管制ユニットの資料を基にして、機密情報を分析していた。
機密情報とは、マライが言っていた西ドイツの女スパイの会話である。
戦術機に搭載される新型ソフトウエアには、米国内にあるスーパーコンピュータにリンクする機能が追加される。
もし本当ならば、すべての軍事作戦は、米国の手の上という事だ。
コンピューターのキーボードを連打しながら、過去の記憶へと徐々に沈潜していった。
紫煙を燻らせながら、つい先日のマライとの会話を思い出していた。
ニューヨークのセントラル公園の近くにある、某ホテルにマライを連れ込んだ時である。
彼女は、マサキに、東ドイツに肩入れする目的を詳しく尋ねたことがあった。
「それじゃ
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