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イベリス
第百三十話 最高のカードその十一

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「小山さんは素晴らしい人生を歩まれるので」
「恋愛もですか」
「そのまま努力をされて下さい」
「それでいいですね」
「そうです、きっと十五年後には」
 その頃にはというのだ。
「立派な女性にです」
「なっていますか」
「必ず」
 そうだというのだ。
「そのまま進まれますと」
「十五年後っていうと」
 咲はその頃の自分を思って言った。
「三十一ですね」
「そうなりますね」
「今私十六なんで」
「今では人生これからですね」
「八十年ですからね」
「ですから」
「まだまだこれからですね」
 速水のその言葉に頷いた。
「本当に」
「そうです、人生は五十年ではなく」
「今は八十年ですね」
「長ければ百年にもです」
 そこまでというのだ。
「至ります」
「百年ですか」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「三十一歳では」
「これからですね」
「左様です」
「それでその頃の私は」
「きっとです」
 まさにというのだ。
「素敵な女性にです」
「なっていますか」
「はい、ですから些細なことにはです」 
 不幸のことをこう言った。
「気を落とされずに」
「前を向いてですね」
「行かれて下さい」
「そうですね、じゃあ今日も」
「アルバイトにですね」
「励みます」
 速水に答えた。
「そうします」
「そうされて下さい、そして」
「そしてですね」
「これからも」
「こちらで、ですね」
「働いてくれますか」
「お願いします」
 これが咲の返事だった。
「これからも」
「高校におられる間は」
「あと大学こっちなら」
 東京の大学に進学すればというのだ。
「やっぱりです」
「こちらで、ですか」
「アルバイトしていいですか?」
「お願いします」
 これが速水の返事だった。
「どうか」
「わかりました」
 咲は微笑んで応えた。
「それならです」
「これからもです」
「働かせて頂きます」
 こう言葉を返してだった。
 咲はこの日もアルバイトをしていった、そしてだった。
 家に帰ってゆっくりと休んだ、ベッドに入った時にはもういつもの彼女に戻っていた、そのことを実感しながら眠りに入ったのだった。


第百三十話   完


                    2023・10・8
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