十話 暗転
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のか!?」
「――!」
再びダウンを奪いながら叫んだシュウの逼迫した彼らしからぬ声に、迷いを断ち切られたトールはメニューウィンドウを開き、受注したクエストの詳細画面を表示させる。その画面下部にあるクエスト破棄選択のアイコンを押しこむと一瞬体が浮くような感覚がトールを包む。
おそらく結晶無効化状態が解除されたことによるものだろう。同時に画面がクエストが破棄されたことを示すシステムメッセージに変化した、使用不可のクエストアイテムとしてアイテムストレージに格納されていた《アンバー・ハート》も消失していることだろう。
すると起き上がろうとしていたハニー・イーターがピタリと動きを止め、その姿がかすれ出し、クエストが完了、あるいは破棄されたときにはその存在を維持できないようになっているのか、死亡時とは異なる周囲の空間に解けていくようなエフェクトを発生させながら消えてしまった。
「ヒール」
再びコマンドスペルを唱えるヨルコ。今度は回復結晶もその効果を発揮しピンクの宝石が砕け散るとトールのHPが全快し、赤く染まっていた視界がクリアになり薄暗い森の景色もはっきりと見て取れるようになる。
「大丈夫ですか?」
「瀕死から立ち直ったばかりなんだ、無理するな」
立て続けに受けたダメージによる倦怠感が残る体を起こすと、シュウとヨルコが気遣わしげな声をかけてくる。静かになった景色のどこかに違和感を感じるが、頭がどこかぼんやりとしており、上手く思考が定まらない。
「シュ……ウ?」
モンスターは消えたというのに、険しい表情をしたまま森の出口の方を見やっているシュウを見ると、彼は突撃槍を背に収め、佇んでいた馬の手綱を握りながらヨルコに声をかけた。
「もうじきカインズさんも来てくれるでしょう、ヨルコさんはカインズさんと合流したらトールを連れて先に街まで帰っていてください」
「はい、でも先にって……シュウ君は?」
「俺は片付けておきたい用件がありますから、まだ帰れません。今日は急なお願いに応じてくれてありがとうございましたヨルコさん、それでは」
ヨルコの問いにそう答えるとシュウは馬に跨り、森の出口へ鐙を向けた。そこでようやく、いつの間にか姿を消していたもう一人の少年のことを思い出したトールはハッと目を見開き、まさかという思いを込めてシュウの背に呼びかける。
「待てシュウ!用件ってなんだ、お前……まさか……」
その先を言葉にすることが出来ず、呼びかけが途切れる。馬上で振り向いたシュウの目が、あまりに迷いなく、透徹として揺らぎない色をしていたからだ。
この少年の意志を曲げることは出来ない、そう感じ取らせてしまうほどに。
「すまないなトール、これはきっと……俺が解
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