十話 暗転
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けてアルバは自分に近づいてきたのかもしれない、そうだったらいい、この理不尽にも納得できる。
そんな諦めの思考がよぎった時、ついにトールのHPがレッドゾーンに達する。視界が徐々に赤く染まっていき、終わりの時が近づき、まるで地面が揺れているかのような錯覚を覚えると、顔を向けていたアルバの表情が驚愕に歪む。
どうしたというのか、声に出ない疑問を抱いた瞬間にそれが飛び込んできた。
地を踏み鳴らす蹄の音を響かせながら暗い森を駆け抜けてくる一頭の馬、それに跨っているのはトールのもう一人のパーティメンバーである少年、シュウだった。
シュウはハニー・イーターにのしかかられているトールを視界に納めるやいなや背の短突撃槍を抜き馬に激を入れ真っ直ぐに向かってくる。
「おおおっ!」
馬上でシュウが突撃槍を引き構えると槍身に深い青の光が生まれる。そのまま馬ごと急加速しハニー・イーターに突撃し騎乗、突撃槍の複合ソードスキル、《ロス・シュネイル》の並みの突進技とは比較にならないほどの凄まじい勢いが乗った突きが大熊の横腹を貫く。
ハニー・イーターの巨体が吹き飛ばされるように転がる、トールを拘束状態から開放するとシュウは素早く馬から降り、ハニー・イーターとトールの間に立ち身構える。もう一人、シュウの後ろに同乗していたらしい人物、ヨルコが飛び降りトールに駆け寄ってきた。
「ヒール!」
ヨルコがポーチからHPを全快させる回復結晶を取り出しコマンドスペルを唱えるが、桃色の結晶がその効果を発動させずに沈黙しているのに彼女は表情を険しくしてシュウを見やり呼びかける。
「ダメですシュウ君!効きません!」
「――パーティ外プレイヤーからでも駄目か」
シュウは身を起こすハニー・イーターを睨んだまま呟く。起き上がった大熊の視線は敵対値が増大する強力な攻撃を受けた今でも、乱入者を無視するようにトールへと向けられている。
「トール、《アンバー・ハート》のクエストを破棄しろ」
「え……」
自身を無視してトールに襲い掛かろうとするハニー・イーターの進路に立ちはだかりながらシュウが叫ぶ。邪魔者を押しのけるべくハニー・イーターが放つ巨腕によるなぎ払いを、先に進ませないことが目的のシュウは避けるわけにもいかず、真っ向から受け止める。
いかに彼のレベルが前線クラスとはいえボスモンスターの筋力に抗しきれるわけでもなく、逸らしきれないダメージがシュウのHPを僅かに削る。防御姿勢を取ったシュウの横を駆け抜けようとするハニー・イーターだが、すかさず浮いた後ろ足にシュウが突撃槍による一突きを叩き込み、バランスを崩したハニー・イーターは足がもつれたように転ぶ。
「早くしろ、死にたい
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