十話 暗転
[5/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ことが出来る故の選択だ。アルバも同様の警戒からだろう、先程から大技ではなく好きの隙無い基本技を主体に攻めている。
ソードスキルのシステムアシストにより加速したトールは反対側のアルバと挟まれる形でこちらに背を向けているハニー・イーターへ向かい真っ直ぐに向かう、その最中。
「――っ?」
不意にトールの耳が異質な音を捉えた気がした。まるでガラスが割れるような硬質で乾いた音。しかしトールは目の前の状況に対応するのが先決と、違和感を振り切りそのまま突進し大熊の背にソードスキルの斬撃を見舞う。
低い唸り声と共にこちらへと振り向くハニー・イーター。しかしすぐにスキル使用後の硬直から立ち直ったトールは左手のバックラーを前に構えながら後方へ飛び退がる。風を切るサウンドを発生させながら目の前を通過する熊の腕、その向こう側でアルバが先刻の繰り返しのようにハニー・イーターの背に《カスカード》で斬り込む。
黄色い光軌が走り、トールの《ソニックリープ》のダメージと合わせれば二本目のHPバーの四分の一までが削れる。順調にダメージを与えていることに安堵しつつ、トールは再度ターゲットを変えアルバの方を向くだろうハニー・イーターに攻撃を加えるべく足を踏み込ませる、が。
「っ!?」
それまで攻撃を加えてきたプレイヤーにターゲットを切り替えてきたハニー・イーターがその時のみ、背後から斬りつけたアルバの方を見向きもせずトールへと迫ってきていた。すっかり交互に攻撃を仕掛ける流れがパターン化していたトールは驚き、一瞬動きを止めてしまう。そこに――
「ぐっ!」
真上から叩き落とすように巨腕の一撃が降ってきた。咄嗟に掲げたバックラーでそれを受け止めるも小さなバックラーで受け止めきれるわけもなく、身に余る衝撃にふらりとトールの体が前へ傾いだところへ更に、ハニー・イーターの左腕が唸りを上げて叩き込まれる。
「がっ……はっ」
胸を巨大な爪に貫かれる異物感と途方も無い衝撃が体を突き抜け、そのまま吹き飛ばされたトールは背から地面に倒れてしまう。動かなければ、と思考するも痺れるような感覚が全身に残っており思うように立ち上がることができない。そんなトールの足に、ハニー・イーターがのしかかる。
「っ……!」
ハニー・イーターが乗ったことによりかかる重量でトールは足を動かすことすらできなくなった。痛みこそ発生しないが大型モンスターにほぼ馬乗り状態にされたこの状況はモーションをとることが発動条件であるソードスキルの大半を封じられた絶体絶命の体勢だった。
現在トールが行っている《アンバー・ハート》採取のクエスト条件によりこの森を抜けるまで結晶アイテムの使用が封じられている。せめてもの回復のために剣を置きハイ・ポーションを取り出すも。
「がっ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ