十話 暗転
[4/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
くつかの操作を立て続けに行っていく。
表示が見えないためマリには何を確認しているのか見て取ることが出来ない。目的の画面に到達したのか操作する手を止めたシュウ、その結果に滅多に感情を露にすることがない彼が苛立つような調子で舌打ちする。
「シュウ君……?」
そのただならない様子にリコが不安げな声をかけるも、シュウはそれに申し訳なさそうな瞳を一瞬返すだけで、ヨルコの方を向くと告げる。
「ヨルコさん、カインズさん、少し付き合っていただけませんか?」
そう申し出た彼の、何かを決意したような強い意思が垣間見える横顔に、マリの中では未だかつて感じたことが無いほどの胸騒ぎが沸き起こっていた。
* * *
「ふッ!」
短い気合を口に、右手のブロードソードを横一文字に振りぬく。獣毛で覆われた目の前の巨熊の背に赤々とダメージエフェクトが刻まれ、攻撃を受けた眼前のイベントモンスター、ハニー・イーターが振り向いた。
「アルバ、スイッチ!」
「おう!」
バックステップを踏みながら鋭く上げた叫びに応えが返る。すぐ目の前の空間を黒光りする爪を備えた豪腕が削り取るのに背筋をヒヤりとした感覚が伝うが、追撃に反応するため挙動を見逃さぬよう視線は眼前のモンスターから外さない。
そうして睨み据える大熊をその背後からアルバが襲撃する。特徴的な形の両手剣が薄青く発光し、単発垂直斬り《カスカード》の一閃がハニー・イーターの背を縦に切り裂き、三本あるHPバーの最上段がぐんと削られ空になる。
両手剣の重い一撃に巨熊は生々しい呻き声を上げながら振り向き様にその太い腕を横なぎに振るった、しかしそれを予測していたアルバは身をかがめるだけでその攻撃を避け、素早く攻撃範囲から離脱する、そのアルバを追おうと足を踏み出すハニー・イーター。
その動きにトールは内心よし、と頷き。再攻撃のために剣を腰だめに振りかぶる。アルバの話に聞いていた通り、いや話以上にこのモンスターはターゲットの移り変わりが激しく、パーティーで挑めば対処が容易な相手だった。
三メートル越えの巨体から繰り出される攻撃の威力はさるものだろうが、そのことごとくが大振りのものばかりで、予備動作を見るだけでトール達のような戦い慣れたプレイヤーならば回避はたやすい。ソロで相手をするならば油断できないが、スイッチできる仲間がいるこの状況ならばたいした脅威でもない。
構えられた剣に緑のライトエフェクトが発生するやいなや、アルバに向いたターゲットを引き剥がすべく片手剣突進技《ソニックリープ》を発動させる。《ソニックリープ》は威力こそ上位のソードスキルに比べ劣るがその分発動後の隙が少なく、唯一警戒すべき攻撃直後の反撃に備える
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ