十話 暗転
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説を求めるように隣の、今回護衛役をつとめてくれた少年と顔を見合わせる。以前聞いたクォーターだという出生の所以か、一般的な日本人より目鼻立ちがはっきりとした風貌の彼、シュウも意味がわからないようで首を傾げるばかりだ。
「もう、こいつらは……」
嘆息交じりの言葉を聞こえないように漏らす。森に向かう道中に弁当タイム中も世間話ばかりでちっともつっこんだ話にもっていかない親友もそうだがこの男も大した朴念仁だった。
朝マリ達と合流し、いつもよりお洒落をキメこませたリコの格好に気づき褒める、そこまでは良かった。しかし一日を通して彼が親友の欲目を抜きにしても人並み以上に整った容姿をしていると見られるリコを異性として気にかけるような様子は見られず、二人の仲を近づけようとするマリの目論見は空振りに終わる結果となった。
森で稀に飛び出してくるモンキー系のモンスターに素早く反応し、そのほとんどをカウンターや受け流しから急所を狙い澄ました一突きで仕留めてしまう手腕はリコにしてつい見惚れてしまうほどのものだったが、そういった心情の機微は持ち合わせていないらしい。
「エセ紳士め……」
再び聞こえないように恨めしげに呟きながら店内のカウンターへ向かうと、カウンター席に座る二人のプレイヤー、先日マリ達も話したヨルコとカインズの二人だった――と話していたらしい店主のエルキンが迎えてくれた。
「やあマリちゃん、今日はシュウ君と一緒なのかい?珍しいね」
「マリさん、シュウ君も、こんにちは」
「こんばんは――はまだ早いか。こんにちは、エルキンさん、ヨルコさん、カインズさん。あいつらはまだ来てないのね、今日は狩りに出てないって聞いたからもうこっちにいるのかと思ってたんだけど」
いつもならばこの時間、ヨルコらが座っているあたりのカウンター席を占領しているあいつら、背後の少年も含む最も顔なじみである三人組のことを思い浮かべながらマリが尋ねると、エルキンがああ、と相槌を返しながら答えてくれる。
「トール君達ならメッセージがあってね、今日は少し遅くなるそうだよ、なんでも四十七層に出かけるとか」
「四十七層?」
それは彼らが普段レベリングに狩りをする階層を考えると低すぎるエリアだった。今日はシュウがいないとはいえそこまで低い層に何をしに――と、疑問を浮かべていると、後ろにいたシュウが前に出てくる。
「エルキンさん、そのメッセージが届いたのはいつごろですか?」
「確か昼を少し過ぎたぐらいだったね、ええと……うん、ちょうど十三時に来ているみたいだ」
わざわざメニューを開きメッセージを再確認しての返答にシュウは表情を鋭い、剣呑な雰囲気すら感じられるものに変化させると、すぐさま右手を振り下ろしメニューウィンドウを表示させ、い
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