十話 暗転
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いかないし、きついだろ」
「大丈夫だって、倒せない相手じゃなさそうってことも言ったろ?タゲ移りやすいAI設定だったみたいだし、スイッチ小刻みに入れれば俺達だけでも十分いけるさ、それに――」
提案に魅力を感じながらも予測されるリスクに迷いを見せているトールにアルバはメニューを開き、アイテムストレージから一つのアイテムをオブジェクト化操作を実行した。そうして青いフラッシュエフェクトを生じさせてアルバの手元に小さな木樽が出現する。
「それは!」
「例の《アンバー・ハート》。使用上限が三回でさ、一回分残してあったんだ。いざとなったら前回みたいにこいつを餌にして逃げればいい」
「……いいのか?」
貴重なアイテムを無為に失くすことになってしまうかもしれないというのに尋ねられたアルバは未練などないように躊躇い無く頷いてみせる。その行動を受けトールは目を閉じ考え込むようにしていたが、ややして目を開くとアルバに対し無言で頷きを返す。
件のクエストに挑戦する意思を固めたらしいその様子にアルバはにやりと笑ってみせ、踵を返し街の転移門の方へと足を向けた。
「ようし!そんじゃクエスト受ける村まで少し歩かなきゃいけねえし、昼飯買ったら早速行こうぜ。あ、シュウには黙っとけよ、デート中に余計な心配かけちゃ悪いしな」
「シュウにそんな気は無いだろうけどな、マリちゃんが苦労してそうだ」
歩き出したアルバを追いかけるトールだが、不意にハッとした表情になりその足を止める。
「夕方までに帰れないかもしれないな……不安がらせてもまずいし、エルキンさんには連絡を入れておくか」
呟いて、広場に並んでいる屋台で昼食となるものを物色しているらしいアルバを見ながら、再びトールはメニューウィンドウを開いていた。
* * *
アインクラッドの空、真上には上層の底部が広がっているばかりだが、隙間から外界を覗くことが出来る外周から差し込む陽の光が赤みを帯び始める夕刻前、エルキンの酒場に木材採集から帰ったシュウ、マリ、リコの三人が帰り着く。
「あ〜〜久しぶりにストレージ木材で埋め尽くしちゃったわ」
「ふふっ、おつかれさま、今日はマリちゃん張り切ってたね」
嘆くような声音で表情で伸びをしながら先頭のマリにねぎらいの言葉をかけるリコ。耳のイヤリング、随所にフリルがあしらわれたドレス・ワンピースと、いつもより着飾らせた格好の彼女にマリはじっとりとした視線を返して不満げな様子で呟く。
「だってリコったら折角二人っきりにさせてあげても全然自分から押していかないんだもん、じれったくてさー」
「……?」
言葉の意味がわからないという風に目をしばたかせるマリ。解
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