十話 暗転
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昼下がりの第五十層主街区アルゲード。猥雑極まりない構造が特徴のその街で、中央広場から伸びる目抜き通りの一角にあるプレイヤーショップでトール、アルバの二人はドロップアイテムの売却を済ませていた。
「でっかい人だったなー、外国人のプレイヤーがいるなんて思わなかったぜ」
「俺も初めて会ったときは驚いたよ、ちょっとネットゲームなんかやる人には見えないもんな」
今しがた出てきた雑貨屋店主の人物について言葉を交わす二人。トールが贔屓にしているらしいそのショップを経営するプレイヤーはSAOが国内でしかサービス展開していないことを考えると相当に珍しいであろう、浅黒い肌をしたアフリカ系アメリカ人だった。
時に両手斧を扱う剣士系プレイヤーとしてフィールドに出ることもあるらしいその人物はがっしりとした体格にスキンヘッドのいかつい顔つきをしており、その容姿は全てのプレイヤーアバターが現実の姿に変更されているにも関わらずこのファンタジー世界に居ながらあまり違和感を感じさせなかった。
「でもいい人そうだったな、笑うとなんか愛嬌あってさ」
「ああ、素材アイテムなんか結構いい値で買い取ってくれるし、信用できる人だと思うよ」
商売人にとって最も重要だといえる要素を保障しながらトールが右手を振り下ろしメニューウィンドウを開く。不可視モードのままでいるため他人には何を確認しているのか見取ることは出来ないが、顎に手を当て悩むようにしている彼の様子から大体の事情を察したアルバは腰に手を当て呆れてみせるポーズをつくりながら声をかける。
「金策追いついてねえのか?」
「ああ、最近レベリングの指導希望してくる下層プレイヤーも増えてきてるんだけど、支援して回るにはちょっと資金が足りなくてな」
苦笑してみせるトール。中層で自身のレベリングに励みながらも日々の戦闘で得た稼ぎを下層プレイヤーの育成に費やす彼にアルバは顔をしかめて苛立たしげに頭をかきむしった。
「自分の装備にだって金はかかるだろうによ、お前ってやつは」
「……悪い」
「もう諦めてるけどさ、ならよトール」
「ん?」
「この間俺とシュウがゲットしてきたステータスアップアイテム、覚えてるか?」
以前彼らが鉱石採集のため鉱山に向かった日の朝。シュウとアルバの二人がワッフルのような焼き菓子に使用していたアイテムのことをトールは思い出す。
「《アンバー・ハート》っていったっけ、あの蜂蜜」
「そうそうアレ、今からでも取りに行かねえか?HPアップアイテムなんて大金出してでも欲しがるやつは結構いると思うぜ、競売に出せばいい値がつくだろ」
「っ、いや……でもそのアイテムが手に入るクエストってクエストボスが出るって言ってたろう、今からじゃシュウを呼ぶわけにも
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