暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第184話:希望に溢れる世界を愛して
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人が近付いた。

「カリオストロ、プレラーティ……それに、明星、颯人君……」
「よっ! お疲れさん。取り合えず、夏とは言え夜は冷えるだろうから……」
〈コネクト、プリーズ〉

 颯人は裸体を晒すサンジェルマンに、魔法で毛布を引っ張り出し被せてやった。頭から毛布を被せられた為、彼女の顔は見えなくなる。
 それでも聞こえてくる声の震え方から、彼女が目から涙を流している事は伺えた。

「何故……何故なの? 何故あなた達は、親子揃って私の考えを否定するの?」

 サンジェルマンの言葉に、颯人は振り返ってカリオストロとプレラーティの2人を仮面越しに見た。彼に視線を向けられた2人は居た堪れない顔になり一度視線を逸らし、しかし直ぐに顔を上げるとカリオストロが代表する様に無言で顎をしゃくった。その様子に彼は肩を竦めると、毛布越しにサンジェルマンの背中に手を添え優しく語りかけた。

「何度も言ってるでしょ? 他人の命を犠牲にした上で変えた世界なんて真っ平御免だって。それに俺は、今のこの世界が無理して変えるほどロクでもないとは思っちゃいないんでね」

 有り体に言って、颯人は今のこの世界が普通に気に入っている。それは順風満帆だからだとか、そんな理由ではない。愛する1人の女が世界に羽ばたき、人々を笑顔にしている。その素晴らしい世界を、守っていきたいが故に抱いた感情だった。

「なら……何故、私を助けるの……世界が変わらないなら、私は……」

 理想が叶えられず、嘗て誓った想いを遂げられないのなら死んだ方がマシ。そう口にするサンジェルマンの前で、颯人は握り締めた拳を開きそこから一輪のガーベラの花を出した。眼前でいきなり出現した一輪の花に、サンジェルマンが驚きに肩を震わせ跳ねた頭から毛布がずり落ち涙に濡れた顔が露わとなる。

「ッ!」
「……世界ってのは、悪い一面ばかりじゃねえさ。アンタも身が裂かれそうになるほど辛い思いをしたのかもしれねえが、今の世界を見限るのは早すぎる。この花、どう見える?」

 颯人の問いにサンジェルマンは答えず、蜜に誘われる蝶の様にフラフラと手を伸ばしてその花を手に取った。ピンク色の花弁を持つガーベラの花を、サンジェルマンはとても穏やかな目で見ていた。

「……綺麗だと、思う」
「だろう? たった一輪の花でも心に染み渡るんだ。もっと広い世界を見てみれば、こんなの目じゃない位綺麗なモノを幾らでも見れる。俺も、そして父さんも、そんな世界を愛してる。そして、アンタにもその世界を愛してほしいから、俺はアンタを助けるのさ。きっと父さんも、同じ気持ちだったんだと思うぜ?」

 穏やかな声色でそう語る颯人の言葉に、サンジェルマンは手元のガーベラの花を今一度まじまじと見つめる。そして視線を上げた先には、未だ彼女の事を慕
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