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犬は犬を食べた人がわかる
第二章

[8]前話
「犬を食べたことのある人がわかって」
「それで、ですか」
「そうした人に吠えるのよ」
「だからふわりもですか」
 そのふわり、リードの先にいる彼女を見て話した。
「吠えたんですね、人には滅多に吠えないのに」
「そうした子でも吠えるのよ」
「犬を食った人には」
「そう、そしてね」 
 それでというのだ。
「私に吠えたのよ」
「そうですか、そのことはじめて知りました」
「だから気にすることはないわ」
「犬はそうした人に吠えるだけですね」
「自分達を食べた人にね」
「自分も食べられると思うんでしょうか」
「そうかも知れないわね、じゃあ私用事があるから」
 女の人は洋介に何でもないといった調子で告げた。
「またね」
「わかりました」 
 洋介もそれではと応えた、そうしてだった。
 女性は洋介達と別れて彼等とは反対の方に歩いていった、洋介はその人を少し見送ってからふわりとの散歩を再開した、家に帰ると母の百合子にその人から言われたことを話したが。
「そうなのね、お母さんも覚えておくわ」
「犬は犬を食った人に吠えることをか」
「ふわりみたいな人に滅多に吠えない娘でもね」
「そうした人がわかってか」
「そのことを覚えておくわ」
 こう言うのだった、そうしてふわりにご飯をあげたのだった。


犬は犬を食べた人がわかる   完


                     2023・12・23
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