聖夜編 悪魔の影と騎士の絵本 後編
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1杯のホットコーヒーを嗜んでいる彼女は、特務捜査官達の諦めの悪さにため息を吐いている。
「……」
そんな彼女の隣に立っているもう1人の人物も、ヘレンとビリーを穏やかな佇まいで見据えていた。鉄仮面に隠されているその表情は冷たくもあり、優しげでもある。
「狼」と「聖職者」を想起させる意匠を持った外骨格を纏っている、謎の人物。彼女もまた、悪魔の力を宿したジャスティアライダーの1人だ。
2本の鋭い牙を彷彿させる独特の顎部装甲。赤と青に輝くマスクアイ。十字型のフェイスシールドに、関節部各所に装着された十字型のパーツ。深青色のラインが走る、赤紫を基調とした流線形の外殻。白い模様が入れられている。布形状の腰部装甲。
狼の如き荒々しさと、聖職者のような洗練さ。相反するその二つが混じり合った姿形は、悪しき力を正しき道のために振るう、「仮面ライダー」の生き様そのものを体現しているかのようであった。
「……射撃の精度、反応の速さ、体術の冴え、躊躇の無さ。確かに、戦闘技術は申し分無い。けれど……直前まで奴の『変異』に気付けなかった詰めの甘さは致命的だ」
仮面の下から、くぐもった女性の声が響いて来る。それは、数多の戦場を潜り抜けて来た元傭兵としての分析。そして、改造人間の力を己の肌で思い知って来た戦士としての、忌憚のない意見だった。
弱者は戦場に立つべきではない。戦場の弾雨は全て、戦士である自分が全て受け止める。その確固たる信念に基づき、ノバシェードと戦って来た彼女としては、ビリーとヘレンは放って置けない存在だったのだろう。
「ハッキリ言って、彼らではこれ以上の戦いには付いて来れないだろう。彼らは……これ以上、前に出て来るべきではない」
彼女の両手に握られている、十字架型の2丁拳銃。その銃口から放たれた「炎」と「氷」のエネルギー弾が、変異した構成員を遠方から「狙撃」していたのである。人知れずヘレンとビリーを手助けしていた彼女は、2丁拳銃をくるくると回転させて腰に収めながら、静かに踵を返していた。
「一応聞きますが、その動作に何の意味が?」
「……『カッコイイ』だろう?」
「はぁ……相変わらず理解に苦しむことを言いますね、マレコシアス。遊んでいる暇があるのなら、あなたも直ちに動いてください。数時間前、ワシントンD.C.でコブラ型怪人が確認されたとの情報が入っています」
彼女の背中を流し目で見遣る縁は、桜色の艶やかな唇を開き、ため息混じりに「次」の出動命令を告げる。どうやら、ノバシェードの構成員達は他の都市でも暗躍しているらしい。扇情的な唇をコーヒーカップに寄せる彼女は、冷ややかな眼差しで「マレコシアス」という戦士の背中を射抜いていた。
「世間はク
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