聖夜編 悪魔の影と騎士の絵本 後編
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マグナム弾を使用出来るようにカスタマイズされている、ビリー専用のコルトパイソン。
その火力は、「失敗作」の改造人間が相手なら十分に通用するのだ。今度こそ確実に「とどめ」を刺された構成員は、2人に向かってもがくように両手を伸ばし、膝から崩れ落ちて行く。
「悪魔だろうと何だろうと……私達は、絶対に退かない」
「あぁ。……それが俺達、ノバシェード対策室だからな」
2人の呟きは、自分達に「忠告」して来た「声」に対する宣戦布告でもあったのだろう。毅然とした表情で構成員の「最期」を見届けたビリーとヘレンは、静かに愛銃をホルスターに収めていた。2人の鮮やかな早撃ちに、周りの警察官達も息を呑んでいる。
(それにしても、さっきの構成員の動き……あれは間違いなく……)
(えぇ……あれは確かに、誰かに撃たれた時の動きだった。それも……この雪の中で、銃声が聞こえないほどの遠距離から……連続で2発。まさか、さっきの「声」の主の仕業なの……?)
(構成員がぐらつく直前、俺達の前に飛び込んで来た「炎」と「氷」……あれは何かの見間違いなんかじゃねぇ。一体、何がどうなっていやがる……!?)
一方。ビリーとヘレンは、自分達にチャンスを与えた構成員の「異変」に思考を巡らせていた。あれは明らかに、どこかから「狙撃」された時の挙動だった。
しかし、警察官達が狙撃手を呼んだという情報は入っていない。ケージもオルバスも、長距離から狙撃出来る装備など持っていないはず。何より――視界が悪くなっているこの雪の中で、銃声も聞こえて来ないほどの遠距離からの狙撃など、並大抵の技量では到底不可能だ。
ならば先ほどの「異変」は、何者の仕業だったのか。視界に飛び込んで来た「赤い炎」と「蒼い氷」は、一体何だったのか。その真相を探し求めるように、ビリー達は警戒を解くことなく、鋭い眼差しで周囲を見渡し続けていた。
「……」
――そんなヘレン達の様子を、遠く離れたビルの屋上から静かに見つめている、1人の女性が居た。風に靡く長い髪からは、艶かしい女のフェロモンが振り撒かれている。
しなやかな曲線を描いた優美な肉体を白衣に包む、絶世の美女。その白く瑞々しい柔肌から滲む甘い匂いが夜風に流され、マンハッタンの空に漂っていた。
黒と白が入り交じり、腰まで伸びているロングヘア。その長髪を夜風に靡かせている彼女は、白く艶やかな手指で耳元の髪を掻き上げ、宝石のような瞳を鋭く細めている。その鋭利な眼差しは、氷のように冷たい。
「……まぁ、この程度の『忠告』で引き下がるほどお利口な方々ではありませんよね。あなた方……ノバシェード対策室は」
彼女の名は、亜灰縁。悪魔の力を持つ影の戦士――ジャスティアライダー達の背後に立つ、闇の研究者であった。
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