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俺様勇者と武闘家日記
第3部
ムオル〜バハラタ
父の軌跡・後編(ユウリ視点)
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たのは紛れもない事実だからだ。
 そんな適当な理由で、俺はある日、魔王を倒す決意をした。人生を変える決断にしては、随分とあっさりしていると、今でも自嘲している。今ごろになって気づいたが、もしかしたら無意識にジジイから逃げ出したかったからなのかもしれない。
 そんな理由もあったからか、俺が突然父親の残した軌跡を目の当たりにしても、感情的になることはないと思っていた。……そのはずだったのだが。
「ユウリ、ユウリ!!」
 肩を揺さぶられ、俺は我に返る。正面に見据えているミオの顔に焦点を合わせると、彼女はほっとした顔をした。
「やっぱりユウリ、様子が変だよ。本当に大丈夫?」
「ふん。お前に心配されなくても俺は大丈夫だ」
 俺は兜を置くと、店主に向かって言い放った。
「悪いが、この兜は渡すことはできない」
「え!?」
 突き放すかのような俺の言葉に、店主は一瞬たじろぐ。話の意味を理解できないようだった。
「もうそいつはいない。渡す相手がいないのだから、持っていっても無意味だろう」
――だって親父は、ネクロゴンドの火山で魔物と共に火口へと落ちてしまったのだから。もう二度と故郷に帰ることはない。そんな奴に、どうやってこの兜を渡せと言うのか。
「い、いないってそんな……。まさか!!」
 意図を汲み取ったのか、店主の顔が次第に青ざめていく。その様子を、俺はただ傍観者のように大して興味も持たず眺めていた。
 すると、店の奥から静かに扉が開く音が聞こえた。
 顔を出してきたのは、ルカと同い年か、少し上くらいの少年だった。彼は見慣れない人間にも臆することなく、じっとこちらを見つめている。やがて俺と視線がかち合うと、一瞬呆けた表情になった。
「あれ? お兄さん、何処かで見たことあるような気がする」
 防具屋の店主と目鼻立ちがそっくりな彼は、十中八九店主の息子だろう。彼は俺をまっすぐに見つめると、カウンターにいる店主のそばまで近づいてきた。
「こら、ポポタ。仕事中に入ってきちゃいかん」
「父ちゃん。この人誰?」
 父親の制止を無視し、ポポタと呼ばれた少年は俺を指差してそう言った。ここは俺が答えるべきなのか、判断に迷っていると、先に父親が口を開いた。
「この人は、ポカパマズさんの息子さんだそうだ」
「えっ!? そうなの!?」
 この年代でポカパマズのことを知っている人間に会うのは初めてだった。ポポタと呼んでいたと言うことは、この少年が――。
「ポカパマズさんのことを知ってるの?」
 ミオが少し背の低いポポタの視線に合わせて尋ねる。
「うーん、小さい頃の話だからあんまり覚えてないけど、父ちゃんがよく言ってた。僕が赤ちゃんのとき、その人に遊んでもらってたって。だよね? 父ちゃん」
「あ、ああ。先ほども言いましたが、ポカパマズさんは村を出
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