第二章
[8]前話
「相変わらずだね」
「子供の頃からか」
「汚いね」
「いいんだよ、大事なのはな」
「食べられる部分はだね」
「目も唇もアラもな」
それこそというのだ。
「全部な」
「食べるものだね」
「そうだよ」
まさにというのだ。
「俺はそうしてくよ」
「だったらいいけれどね」
「ああ、美味いし身体にいいからな」
こう言って相変わらず魚の食べ方は汚いままだった、弟はそんな兄の食べ方をどうかと思っていたが。
兄は料理人になった、それでだった。
「へえ、アラもなんだ」
「頭だってな」
サラリーマンになった弟に身内の集まりで自分の料理を振る舞いつつ話した。
「全部な」
「使うんだ」
「アラは煮ると美味いんだ」
まずはこちらのことを話した。
「それで頭は吸いものにしてな」
「ダシにして」
「頭自体も食べるんだよ」
「それをお店でも出してるんだ」
「店長さんに捨てる位ならって話してな」
働いている店でそうしているというのだ。
「それでな」
「出してるんだ」
「安くな、するとな」
「人気あるんだね」
「ああ、アラもダシにするしな」
煮るだけでなくというのだ。
「好評だよ、お客さんからもな。安くてな」
「美味しいって」
「ああ、店長さんも捨てるよりいいって言うしな」
「捨てる様なものを人気商品にしたんだ」
「そうなるな、だから子供の時言っただろ」
弟に鱧の吸いもの、頭が入ったそれを出して言うのだった。
「魚は隅から隅までな」
「食べるもので」
「それが美味くて身体にもいいんだよ」
「実際兄ちゃん健康だしね」
「だからな」
それでというのだ。
「いいんだよ」
「そのことが今わかったよ」
「それは何よりだ、じゃあ鱧も食えよ」
「そうするね」
兄の言葉に頷いて鱧の吸いものを口にした、吸いもの自体もよかったが頭も美味かった。それで笑顔になるのだった。
魚の食べ方が汚い兄 完
2023・12・16
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ