第四十七話 慕情その十五
[8]前話 [2]次話
「共に笑おうぞ」
「わらわは望んでいません」
これが丁の返事だった。
「その様なことは」
「まだ言うか」
「あくまで」
「なら止めてみせよ、この状況を乱し」
そうしてというのだ。
「そのうえでな」
「全てを滅ぼすのですか」
「そうしてやるからのう」
「まだ何を動くのか」
「見ておれ」
そこまでは言わなかった。
「やがてわかる」
「そうですか、しかし」
「そなたは止めるか」
「わらわはあくまで、です」
「人間を護るか」
「地球も。人は必ずです」
「地球も護るか」
「そうですから」
「わらわは人間がそうするかどうかなぞな」
「どうでもいいというのですね」
「そうじゃ、そんなことはじゃ」
それこそというのだ。
「よい、ただじゃ」
「憎いこの世の全てを滅ぼす」
「そうする、だからな」
「動かれますか」
「そうする、だから見ておれ」
「ならば必ずわらわは止めます」
「ふふふ、止められるなら止めてみよ」
もう一人の丁は不敵に笑って応えた。
「わらわをな」
「貴女が出たのもわらわの責。ならば」
「止めるか」
「そうします」
「その言葉受けた、では勝負じゃ」
「わらわはそうしたことなぞしたくないですが」
「そなたの考えに関わらずじゃ」
「貴女と闘うことになりますか」
「そなたはわらわであるからな」
だからだというのだ。
「鏡合わせであるなら」
「闘うしかない」
「しかしそなたは決して害さぬ」
「わらわ達は同じなので」
「この世で只一愛おしい存在じゃ」
もう一人の丁はこのことは真顔で述べた、そこには悪意も邪気もなく純真に想っている気持ちが出ていた。
「どうして害する、この世を滅ぼし」
「わらわ達が世を去るまで」
「共にいようぞ」
「・・・・・・そうであっても人間も世界も滅んでは何になるか」
「憎いものなぞ滅ぼすのじゃ」
「それはならないです」
あくまでと言ってだった。
丁は深い眠りに入った、だがそれでもだった。
目覚めても憂いがあった、だがそれを隠してそのうえで考えるのだった。もう一人の自分が何を考えどう動き自分はどうすべきかを。だが今は何も読めずわからず憂いを持ったままであった。
第四十七話 完
2023・10・8
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ