第9話:勇者の計算外その2
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ツバさん達を追撃する心算か!?
この俺に恩を仇で返させる心算かこの糞男は!?
「……やめておけ……」
「やめておけ?お前まさか、極刑級の盗人女を庇う気か?」
「そうじゃない。俺は鑑定スキルを持つ兵士でなぁ……ツキツバさんの過去も鑑定してやった」
「……極刑級の盗人女に関する新たな情報と言う訳か?聴かせて貰おう」
食い付きやがった!
勇者を騙るだけあって、余程ツキツバさんがこの屑男より先に聖武具を入手した事に関して、相当はらわた煮えくりかえっている様だなこの糞男はぁ!?
言ってやる……ノノ君やセツナには言わなかった、ツキツバさんの恐るべき過去をぁーーーーー!
「信じないと思うが、ツキツバさんは別世界人だ。しかも、ツキツバさんはかつて居た異世界で3桁を超える人間を殺した狂人だ……貴様如き屑など、ツキツバさん、もとい!ツキツバ様の手にかかれば、あっという間に亡骸よぉーーーーー!」
どうだ!
驚け!ビビれ!恐れ慄け!ツキツバさんと貴様の様な屑男では、桁や次元どころか存在が違い過ぎるんだよぉーーーーー!
……!?
何故……この屑は何を笑っている!?
「そうか……奴は3桁を超える殺人を犯したのかぁ」
え?そこだけ拾ったの?別世界人の部分は?
「なら、世の為人の為に勇者であるこの僕が、邪悪の化身と言っても過言ではない極刑級の盗人女を逮捕してあげないとねぇ」
だから別世界の部分はどうした!?
この屑男……本当に聞き手に致命的に向いてないな!?
その後もこの屑男の尋問は続いたが、他の兵士達が俺の異変の気付いて駆けつけてくれたお陰で、アイナークの事は話さずに済んだ。
だが、この名誉欲と出世欲の化身である屑男がアイナークの未探索遺跡に興味を持つ可能性は大きい。
さっさとロアーヌ伯爵への手紙を書いて先手を打っておこう。
貴族が俺の様な下っ端が書いた手紙を読むとは思えないが、何か手を打っておかないと気が済まない。
セインperspective
早々にルンタッタを後にした。
街を出た僕らは適当な場所で話し合いを行う事にする。
議題はこのまま進むか、一度国へ戻るか、だ。
勇者である僕は各国共通の切り札的存在な訳だが、基本的には祖国であるバルセイユ所属となっている。
あくまでもこのアルマン国には派遣という名目で来ている。
しかしだ、この国は冒険をするにはうってつけの素材が揃っている。
複数のダンジョンに強い魔物、魔族の国とも比較的近く、とにかく戦いには事欠かない。
おまけに美人が多いと評判の国でもある。
このままおめおめと帰国するのはどうだろうか。
さらに言えば、僕はバルセイユ王室からずいぶんと期待されている。
魔王を討伐した暁には爵位と領地が約束され、場合によっては姫君との縁談もあり得るとされているのだ。
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