冬への逆行
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の花々しい世界が、一瞬で氷のオブジェに生まれ変わっていく。
「これは……!?」
「騒がしいな……」
そして響く、低い女性の声。
振り向けば、真っ先に兎のような長い耳が目に入った。
それを生やすのは、兎ではなく人間。肩まで伸ばした白い髪と、同じく白と灰色の服装は、ローブと呼称していいのか疑問符が浮かぶ服装の女性。ところどころボロボロに擦り切れており、その先端部は擦れなどの汚れも溜まっていた。
だからこそ、右腕に付けられているオレンジ色のマフラーがとても異彩を放っていた。
鼻のところに深い切り傷___それは切り傷なのだろうか。カサブタにしては、とても光沢があるように見える___を走らせた彼女は、冷たい目でウィザードを、そしてアルゴスを睨む。
「……」
ウィザードは思わず、ウィザーソードガンを下ろす。
これまでの経験則から、ウィザードは知っている。
今、この見滝原において、彼女のような目をした人物は、ウィザードと同じく……
「何だお前? わざわざ絶望しに来たのか?」
どうやらアルゴスは、彼女の出現と現在の環境変化が結び付いていないらしい。
手にした剣を女性に向けながら、再生した目がその身より飛び出す。さらに合わせて、魔力が込められた石を女性の周囲に投げつける。
「グール共!」
アルゴスの掛け声とともに、魔石がグールへと成長する。それぞれ槍を構え、徐々に距離を詰めてくる。
だが。
「私を絶望させるだと……?」
彼女が言葉を一つ一つ紡ぐごとに、気温が下がっていく。
「やってみろ……」
冷たく言い切る女性。
すると、突如としてグールたちの動きが止まる。
それぞれの体が氷に閉ざされ、氷像と化している彼らを一体一体一瞥した彼女は、自らの手に息をかける。
「ふう……」
すると、その掌から手首に至るまで、氷の塊が生成されていく。
美しい氷で作られた刃のそれを振るう。すると、藍色の閃光とともに、氷塊となったグールたちが一瞬で粉々に砕け散った。
「氷を……操れるのか……!」
だが、彼女の肌は、不健康なまでに白い。
あの能力は、自らにもダメージが大きいのではないか、と予感する間にも、彼女は走り出す。
いや、彼女の動きそのものは歩行に過ぎない。だが、彼女が触れる地面が氷を張り、滑りながらウィザードとアルゴスへ接近してくる。
「っ! 来る!」
彼女にとっては、ウィザードもファントムも敵であることに変わりない。
ウィザードとアルゴスの間に入り、その刃で一閃。ウィザードとアルゴスに等しくその胸元を斬りつけた。
「ぐっ!」
「この……!」
ウィザードとアルゴスは、共に防御。ともに腕から火花を散らし
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