第三十一章
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「もうな。完璧にな」
「けれど健吾さんって」
ここで静香が言う。
「あれですよね。たこ焼きも」
「そや、焼ける」
このことには確かな顔で頷くのだった。
「そやけれどな、そいつはホンマモンの天才やったんや」
「何かごっついのがおるみたいやな」
キンタロスはそれを聞いて呟いた。
「そのリョウちゅうのは」
「だからや。俺はたこ焼きは諦めた」
語るその顔が険しいものになっていた。
「それでお好み焼きに専念することにしたんや」
「鯛焼きはどうなったの?」
「鯛焼きもな」
今度もまた苦い顔を見せる襟立であった。ラモンに答えながら。
「そっちもあかんかった」
「また誰かいたのか」
「そのリョウのかみさんやった」
力に顔を向けて述べた。
「リョウと同じ完璧に関西弁の女でな。そいつが鯛焼きの天才でや」
「それで駄目だったの」
「そや、諦めた」
またであった。
「それもな」
「それでお好み焼きか」
「これやったら負けへん」
次狼に述べながらそのお好み焼きを必死に焼いていく。
「誰にもな。それで渡」
「あっ、はい」
「ちょっと食うてみてくれ」
ここでその焼けたうちの一枚を彼に差し出すのだった。
「これな。ちょっとな」
「はい。それじゃあ」
「それでこれ具は何なんですか?」
「海老と烏賊と貝や」
こうナオミに対して答える。
「特製シーフードお好み焼きや。どや?」
「美味しいですよ」
紅は早速その特製シーフードお好み焼きを食べてみて答えた。
「物凄く」
「そうか、いけるか」
「今これで生きてるんですよね」
「そうや」
強い声で紅に対して頷くのだった。
「これでな。食ってるんや」
「そうですか。お店ですか?」
「一応屋台や」
こう紅の問いに答える。
「そのリョウとかみさんと一緒にな。やってるんや」
「そうだったんですか。一緒にですか」
「ああ。屋台三つ並べてな」
今の店の状況も語る襟立だった。
「やってるんや。それなりに儲かってるで」
「それよかったじゃないですか」
静香は素直にそのことを喜んだ。
「それじゃあこれからは」
「ああ、お好み焼き屋や」
道は完全に見つけているのだった。
「日本一のお好み焼き屋になったるで」
「おお、いい根性してるじゃねえかよ」
モモタロスは今の言葉を聞いて笑っているかのように頷くのだった。
「御前その根性でいけば絶対に日本一のお好み焼き屋になれるで」
「そうか。なれるか」
「何なら俺が手伝いに来てやるよ」
まだ焼いている襟立の向かい側に座っての言葉である。
「その時はよ。大船に乗ったつもりでいろよ」
「ああ、駄目駄目」
ここでウラタロスが出て来て言ってきた。
「先輩なんかね。もうね」
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